(2020-5-30更新)
毎月の給与では、基本給のほかに残業手当や扶養家族手当など、様々な手当が支給されています。
給与明細を見ると多くの手当が支給されているので、名称から察しが付くと思いますが、実は、法律で支払いが決まっている手当と、会社が福利厚生として任意で支払っている手当があるのをご存知ですか?
もし、法律で支払い義務がある手当を会社が勘違いして計算してしまっていたら、貰えるはずの手当を貰い損ねている場合だってあるかもしれません。
今回は、法律上の手当の仕組みと計算方法、任意に支払われる手当について解説します。
目次
手当とは
基本給以外に支払われる賃金のことをいい、残業時に支払われる時間外手当から、家庭の事情で支払われる扶養家族手当、住宅手当など様々な種類があります。
ただし、手当の支給を会社の任意に任せてしまうと、「うちは経営が厳しいから払えない」と労働者の待遇が悪化してしまう恐れがあるので、法律で最低限払う手当を規定しています。
手当の分類は次の通りです。
- 法律上の手当:法律で支払いの義務があるもの
- 任意に支払う手当:会社が福利厚生として任意に支払うもの
それぞれ順番に解説します。
法律上の手当
法律上の手当は、労働基準法で規定されている次の3つの手当のことです。
- 時間外手当
- 休日出勤手当
- 深夜手当
どの手当も聞いたことのある馴染みのあるものばかりですが、実際の計算方法についてはご存知ない人もいるのではないでしょうか?
時間外手当(残業)
時間外手当は、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働いた場合に支払われる割増賃金のことです。
例えば、1日の労働時間が6時間の人が2時間残業しても、割増賃金は支給されず、2時間分の通常賃金が支給されるだけです。
もちろん、会社が従業員を残業させるには、従業員の代表者と「三六協定」を締結するのが前提です。
- 時間外手当:25%
- 60時間を超えた場合(※1):50%
【関連記事】
遅刻して残業したら残業手当どうなるの?残業手当の正しい計算方法
休日手当(休日出勤手当)
休日手当は、法定休日(週1日、または4週間で4日)に労働した時に支払われる割増賃金のことです。
法定休日は耳慣れない言葉ですが、会社の休みは、法定休日と所定休日があり、週休二日制の会社なら、土曜日(所定休日)、日曜日(法定休日)と設定していることが多いです。
この例だと、土曜日の所定休日に働いても休日手当は支払われずに、時間外手当が支払われます。
休日手当:35%
深夜手当(深夜労働手当)
深夜手当は、夜22時から翌朝5時に労働した時に支払われる割増賃金のことです。
深夜の割増賃金は、「時間外手当」「休日手当」と併せて払われますので、休出で深夜に働いたら35%と25%が両方払われますので、計60%の割増率となります。
- 深夜手当:25%
- 時間外で深夜勤務:25+25=50%
- 休日で深夜勤務::35+25=60%
会社が任意に支払う手当
役職手当
役職手当は、役職者に対して支払われる手当で、主任や係長、課長、部長など、責任の重さや役割に応じて支払われます。
特に、課長以上の管理職は、この役職手当に残業手当が含まれているから、「別途残業代が支払われない」と思い込んでいる人もいますが、本来は、役職手当と残業手当は別物です。
扶養、家族手当
扶養手当は、扶養家族(配偶者、子ども、両親)がいる場合に支払われる手当で、配偶者は10,000円、子ども一人5,000円などと会社によって定められています。
扶養手当は、一家の大黒柱が家族を支えるという昭和の時代的な考え方に基づいているので、近年、見直しされつつある制度です。
特に、配偶者手当は、扶養控除内で働くことの弊害や共働き世帯からも反感があり、国家公務員でも2017年度から配偶者手当を13,000円から、6,500円まで段階的に削減される見直しが行われましたので、民間企業も追随する動きが出ると思われます。
住宅手当
住宅手当は、本人名義の住宅や賃貸住宅に住んでいる場合に支払われる手当で、住宅ローンや家賃(賃料)の一部として支払われます。
住宅手当を一律に支給している会社もありますが、本来は社員ごとに個別に決定すべきものなので、賃貸借契約書などの提出が求められることもあります。
- 住宅ローンや家賃全額(上限5万円)
- 住宅ローンや家賃の金額に応じて支給(5万円以上:2万円、5万円未満:1万円)
通勤手当
通勤手当は、自宅から会社までの通勤費用を負担する手当で、電車やバスの定期代か、または自動車やバイクのガソリン代として支払われます。
なお、公共交通機関の通勤手当の非課税限度額(※2)が、平成28年1月から、1か月15万円に増額されました。
(※2)通勤手当の非課税限度額とは、この額までは通勤手当として支給しても、課税されない限度額で、この金額を超えると、従業員に所得税が課税されます。単身赴任手当
単身赴任手当は、会社の転勤命令により単身赴任で働いている従業員に支払われるもので、別居手当(生計補助)と帰省手当の2種類があります。
- 別居手当:家族と離れて暮らすことに対する手当
- 帰省手当:家族のもとへ帰るための旅費補助
別居手当の部分は、一律〇万円と定額で決まっている会社が多いですが、帰省手当の部分は、家族の住居との距離に応じて決まる場合と、公共交通機関の往復交通費が支払われる場合とがあります。
資格手当
資格手当は、会社が奨励している資格を取得している人に支払われる手当で、建築士、測量士、宅地建物取引士などの国家資格や秘書検定、簿記検定などの民間資格を対象にしているなど様々です。
特に、IT系企業は資格取得に力を入れており、取得支援(テキスト代)や受験費用を負担する会社も多く存在します。
皆勤・精勤手当
皆勤手当、精勤手当は、欠勤や遅刻・早退が無いか、1回までの従業員に支払われる手当で、正社員に対して支払われることはあまりありません。
もらって嬉しいユニーク手当
近距離手当
勤務先から一定範囲(2~5Km以内など)の近距離に住む人に支払われる手当で、近くに住んでいるだけでもらえるありがたい制度です。
自転車通勤手当や近隣手当、近隣住宅手当など名称が異なることもありますが、近隣に住んでいる従業員にたいする優遇制度であることには変わりません。
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誕生日手当
誕生日手当は、社員の誕生日の月に支払われる手当で、年に1回もらえる嬉しいプレゼントの意味合いがあります。
誕生日手当に似ているのが、誕生日休暇がある会社もあり、ちょっとした気遣いが嬉しいし社員のやる気につながりますね。
出産手当
出産手当は、社員(配偶者)が子どもを出産した時に支払われる手当で、共済会から支給される出産祝い金とは別に支払われるので、随分太っ腹で嬉しい手当です。
なお、出産した場合は、加入している健康保険組合から「出産育児一時金」として42万円が支給される制度もあります。(こちらは病院の出産費用に充てることになりますが)
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
法律上は、残業・休日・深夜手当は義務として定めていますが、その他の手当は任意とされています。
とは言え、企業も人材を確保するために魅力ある制度(手当、福利厚生など)に力を入れているのが現状ですので、これから転職する人は、給料面以外もチェックすることが重要になってきます。
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このような多彩な手当ては、入社前にわかりますか?
求人票にも誕生日手当や近距離手当を見たことありません。
コメントありがとうございます。
求人票の待遇欄に記載されるものなので、書いてないということは、その会社ではそういう制度が無いということです。
手当で思うのは、独身実家暮らしの若い人が支給手当が少なく可哀想だと感じます。
生計を考えたら仕方ないことですが。
確かに、同じ仕事をしているのに毎月何万円も手当で差が付くのは内心面白くはないと思います。
生計を支えるために手当を支給しているので、どうしても独身実家住まいと扶養家族がいる人に差が生じるのは致し方ないところです。
いつも拝見しております。
家族手当の中でも、配偶者手当は支給額が減る傾向になるのでしょうか?
配偶者手当の支給額が減ることは考えられます。
日本では人手不足なので、人材確保から扶養枠を超えて働いてもらいたいという要請が出ることも考えられますから。
質問よろしいてすか。
皆勤手当と精勤手当は、社員には無いのが通常ですか?
結論から申し上げますと、皆勤手当と精勤手当は正社員でも支給される企業は存在します。
ただし、本来正社員は皆勤・精勤が当然のことですので、手当によって出勤を促すのはどうかと考えております。
そもそも、頻繁に欠勤や遅刻早退がある社員には、勤怠不良として処分がされることも珍しくありませんから。
深夜の割増賃金は、もともと深夜が勤務時間だったとしても貰えるのですか?
深夜に残業で働くとおいしいですね。
はい、深夜(22時~翌朝5時)に働いた場合は、もともと深夜勤務の人でも日勤からの残業勤務の人でも、25%の割増賃金が支払われます。
なお、これ以外にも、企業が独自に「夜勤手当」として、1勤務当たり数千円以上もらえることもあります。
【関連記事:夜勤手当とは?】
https://tenmanual.com/tenshoku/2180/
深夜の労働は、人間が寝る時間に働くので体力的にも精神的にも辛いので、日勤と同じ給与では誰も働いてくれませんからね。
質問ですが、60時間越えた残業手当は、60時間を越えた部分だけでしょうか?
それともその月全てが50%でしょうか?
ご質問の件ですが、以下の通りです。
月60時間までは25%
月60時間を超えた部分は50%
例えば、80時間の残業をした場合は、60時間が25%増し、20時間が50%増しとなります。
なお、企業との話し合いによって、60時間を超えた部分は「代替休暇」という方法もあります。
当然のことですが、60時間を超える残業は身体への影響が多いので、行わない・行わせないことが重要なことです。
いつも拝見しています。
一点質問ですが、役職手当のところで、
> 特に、課長以上の管理職は、この役職手当に残業手当が含まれているから、「別途残業代が支払われない」と思い込んでいる人もいますが、本来は、役職手当と残業手当は別物です。
管理職には時間外手当は払わなくてよいということを聞いたことがありますが、それでも併用して払われるものなのでしょうか?ご教授いただければ幸いです。
コメントありがとうございます。
労働基準法では、「管理監督者」には残業手当を払わなくてもよいとされていますが、これに該当するには以下の4つを満たすことが必要とされています。
経営に参画しているか、部門全体を統括している
部下の人事の決定権がある
自身の出退勤が裁量に任されている
部下より相当な高給と貰っている
つまり、ほとんどの課長クラスは該当しないと思われるので、残業手当が必要になります。
会社での「管理職」と労働基準法の「管理監督者」はイコールではありませんので、いわゆる「名ばかり管理職」として残業手当が必要になる訳です。
管理人たなです。
休日出勤で深夜に働いた時の割増賃金の質問をいただきましたので、「時間外+深夜=50%増」「休出+深夜=60%増」の内容を追記いたしました。
今後とも当サイトをよろしくお願いいたします。