(2020-7-22更新)
時間外手当とは、残業したら25%の割増賃金が支払われることは知っていても、正確な計算方法はご存じでしょうか?
例えば、9:00~18:00(実働8時間)に、2時間遅刻して、11:00~21:00(実働9時間)まで働いた場合は何時間分の残業手当を払えばいいか悩んでしまいますね。
実際に、「残業したのに残業代もらえなかった」こんなもらい損をしないためにも、仕組みを理解しておきたいですね。
今回は、時間外手当の制度や計算方法について、分かりやすく解説します。
時間外手当(残業手当)とは
時間外手当とは、法定労働時間(1日8時間、または週40時間)を超えて働いた場合に支払われる割増賃金のことをいいます。
残業手当は、会社が任意に払うものではなく、法律によって支払いが義務付けられているので、「うちは経営が厳しいから」などと言い訳を付けても、支払いが免れるものではありません。
労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、(中略)賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
出典:労働基準法第37条
- 時間外手当:25%
- 60時間を超えた場合(※1):50%
時間外手当が支払われる基準
時間外手当は、1日8時間、または1週間40時間のどちらかを超えたら支払う義務があります。
なお、労働基準法では、1週間40時間の起算日は、日曜から始まることになっています。
- 1日8時間、または1週間40時間のどちらかを超えた場合
- 1週間の起算日は日曜日
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残業手当が支払われるケース
1日8時間以下だが、1週間40時間を超えた場合
1日の労働時間は8時間以下なので残業手当が発生しませんが、1週間の労働時間の合計が7時間×6日=42時間なので、土曜の勤務時に2時間の残業手当が発生します。
1週間40時間以下だが、1日8時間を超えた日がある場合
1週間の労働時間の合計が40時間なので残業手当が不要に見えますが、月曜日の労働時間が10時間なので、月曜日に2時間の残業手当が発生します。
遅刻・早退などがあった場合
まず、月曜日に2時間の残業手当が発生します。
次に、1週間の労働時間の合計が44時間ですが、月曜に2時間残業手当を払った分は除外して、1週間42時間と考え、土曜の勤務時に2時間の残業手当が発生します。
なお、遅刻や早退などの事情は考えず、実労働時間(火曜日は4時間)として計算します。
時間外手当が誤解されやすいケースは?
課長は時間外手当が不要?
管理職には時間外手当を支払う必要はありませんが、それは管理監督者として、「経営者と一体的な立場にある」場合に限られます。
- 管理監督者として相応しい給料が支払われている
- 人事権(部下の採用や給与決定など)をもっている
- 勤務時間が本人の自由裁量に任されている
例えば、チェーン店の店長は、多くが一般社員より少し良い程度の待遇なので、「名ばかり管理職」とされ、上記の判断基準を満たしていないことが多いため、管理監督者とは認められない場合があります。
なお、深夜(22:00~5:00)に労働させた場合は、管理監督者であっても深夜手当を支払わなければなりません。
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みなし残業(固定残業)制度は残業時間の計算が不要?
みなし残業(固定残業制、定額残業制など)は、給与にあらかじめ一定時間分の残業手当が含まれている制度で、一定時間を超えた残業手当まで払うことが免除される訳ではありません。
例えば、月40時間までの残業手当が給与に含まれている場合、月40時間を超えた残業をした場合には、超えた部分の残業手当を払う義務があります。
【例】月給25万円(月40時間分の残業手当を含む)
- 1か月の残業時間が60時間なら、20時間の残業手当を支払う
- 1か月の残業時間が20時間でも、減給無しで、40時間に満たない分を翌月に繰り越しできない
関連記事に詳しく書いてありますが、みなし残業制度の会社では、労働時間の管理がずさんだったり、超過分の残業手当が払われなかったり、問題が多い制度なので、求人票だけでなく面談などでもしっかり内容を確認しておく必要があります。
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みなし残業はどんな制度か?固定残業代は労働者にメリットがない
15分未満の残業は切り捨てられる?
定時間、残業時間共に、労働時間は1分単位で計算しなければならず、切り上げることはできますが、切り捨てをすることはできません。
ただし、1か月間の労働時間を集計して、1時間単位にするために、30分未満の場合は切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることは可能です。
- 1日単位では、端数を切り上げできるが、切り捨て不可
- 1か月単位で、1時間未満の端数を30分未満切り捨て、30分以上を切り上げすることは可能
まとめ
いかがでしたでしょうか。
時間外手当は「残業すれば貰える」と考えていた人もいたのではないでしょうか。
特に、1日の労働時間が短い場合、残業しても「通常賃金」しか貰えなかったのは「1日8時間、または1週間40時間」を超えていないことが理由だったのです。
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へえ、残業は1分単位で計算するんですか。
バイトじゃ14分までは切り捨てとか頻繁です。
実際に、在場時間を1分単位で把握している会社は結構あります。
特に、客先に常駐するITエンジニアは時間をしっかり把握していることがありますね。
1日8時間、1週間40時間のどちらかでも越えたら残業手当が払われるんですね。
その通りです。
週に6日、毎日7時間ずつ働いても、6日目には42時間になるので2時間分は割増賃金が必要となる訳です。
定時間が7時間半だと、残業しても最初の30分間は割増が付かないことは知っていましたが、意外に複雑ですね。
コメントありがとうございます。
時間外手当は労働基準法で決められているので、計算もルール化されています。
無くもないことですが、企業独自で法律以上の残業手当を払うことは可能です。