(2020-8-2更新)

会社を辞めて転職や脱サラをする場合、最後にもらえる給与は生活資金として大切に使いたいですね。

ところが、最後の給与は想像よりも少ないことがあるのをご存じですか?

どうして手取り金額がこんなに少ないの?

これでは生活費が厳しくなる

これは、企業が「退職者だから分からない」と、適当な名目で金銭を徴収したからではなく、最後の給与から天引きで清算する金額があるからです。

最後の給与を転職活動資金と考えていたら、手取りが少なくては予定が狂ってしまいます。

なぜわざわざ最後の給与から「清算」が行われるか気になりますね。

今回は、最後の給与から天引かれるお金について解説します。

給与から何が天引きされる?

給与は、支給金額が全額振り込まれるのではなく、様々な名目でお金が天引きされて(控除)、残った金額が手取り金額として振り込まれる仕組みです。

具体的には、給与明細をご覧になれば分かりますが、次の内容が控除されています。

  1. 所得税
  2. 住民税
  3. 社会保険料(健康、年金、雇用、介護保険)
  4. 財形貯蓄、共済会、組合費など(加入している場合)
  5. その他(社食、レク費など)

会社によって異なりますが、おおむね上記のようなものが天引きされるため、平均すると、支給総額の20~30%も天引きされていますので、無視できない金額ですね。

なお、上記1~3のみが引かれる場合、20%前後で済みますが、4~5が引かれると、それだけ手取りが減ることになります。

では、次からは退職時の最後の給与の場合どうなるかを解説します。

最後の給与は清算される金額がある

最後の給与から清算されるもの

会社からもらえる最後の給料は、実は「清算される金額」があるため、普段の月より手取りが少なくなる場合があります。

具体的には、次の3つが清算されて手取り給与が減ってしまう事態が起きてしまいます。

  • 住民税
  • 社会保険料
  • その他清算金額

それでは、具体的にどれくらい減ってしまうか見ていきたいと思います。

住民税の徴収方法は2つ

基本的には、住民税は次の2種類の徴収方法があるので退職時にややこしいことになるのです。

特別徴収(サラリーマン)

給与所得者は、従業員数人の小さな会社を除いて、特別徴収といって給与から天引きされる方法で徴収されます。

具体的には、前年の所得金額に応じて、6月から翌年5月までの12か月間かけて12等分ずつ給与から天引きされます。

毎年6月の給与支給時には、「給与所得等に係る市町村民税・道府県民税 特別徴収税額の決定・変更通知書」が渡されると思いますが、これが今年度に納税する住民税の金額を通知してくれる書類です。

会社に副業がばれるのも、この通知書に副業で得た収入が記載されているからなんですよ。

普通徴収(自営業など)

特別徴収以外の人たちは、普通徴収という市区町村から送られてくる納付書で払い込みます。

ここで複雑になってしまうのが、特別徴収と異なり、年4回(6月、8月、10月、1月末)に分けて納税する方法が取られているので、給与所得者が退職すると毎月12等分納めていたものを年4回に変える必要が生じるからです。

退職時の住民税については、以下記事で詳しく解説しているので、ここではポイントだけにしておきます。

【関連記事】

退職後の住民税手続き方法!普通徴収と特別徴収の違いと申告

退職時の住民税はどうなるか?

例外はありますが、基本パターンで解説しますと、退職日によって2パターンに分かれます。

【6~12月に退職した場合】

  • 最後の給与・退職金から、翌年5月までの住民税を一括徴収
  • 未納分を再計算して普通徴収に変更

退職する会社で特に手続きをしないと、未納分を「普通徴収」で納めることになります。そのうち市区町村から納付書が送られてくるので、期限に従ってコンビニなどから納めます。

例えば、9月に退職した場合、未納分を10月末、翌年1月末の2回に分けて納めます。

【1~5月に退職した場合】

  • 最後の給与・退職金から、5月までの住民税を一括徴収

1月から5月までに退職した場合は、未納分を最後の給与から一括で納めることになるので、1月に退職した場合は、5か月分の住民税を天引きされるため、手取り金額が大幅に減ってしまうのです。

【関連記事】

内定したら確認する内容は?労働条件通知書の確認方法を解説

(下に続く)

社会保険料

続いて社会保険料ですが、原則として(例外はあります)

今月の保険料は、翌月に支払われる給与分から引かれます

つまり、1月分の保険料は、2月に払われる給与から徴収されるのです。

ここまでは、何も問題なさそうですが、退職日(資格喪失日)によって払う、払わないが起こり得るので、世の中では損得論が起こってしまいます。

社会保険の資格喪失日は退職の翌日

会社を退職した場合は、次の2つのルールに従って保険料の徴収が決まります。

  1. 退職日の翌日が、社会保険の「資格喪失日」
  2. 「資格喪失日」の含む月は、保険料が徴収されない

具体的には、

  • 1月30日に退職、資格喪失日は1月31日となり、1月分の保険料が徴収されない
  • 1月31日に退職、資格喪失日は2月1日となり、1月分の保険料が徴収される

月末に退職すると、1月分の保険料が2月支給分の給与から引かれますが、給与締め日の関係で、2月分支給の給与が無い(少ない)時は、1月支給分から徴収されるので、手取り額が減ってしまうのです。

つまり、通常は「月末退社」が多いので、1か月分の保険料が余分に徴収されるので、これが原因で「月末退社」は損という話が出てくるのです。

月末の前日(この例だと1月30日)に退職した方が、保険料がお得になるパターンは、

  1. 独身で収入が一定以下
  2. 会社都合退職で、国保の保険料が軽減される
  3. 配偶者の社会保険に入れる(扶養家族になる)

3番のパターンで、扶養家族に入れる事が分かっているときは、月末の前日退職もありかなと思います。

1~2番のパターンでは、逆に、厚生年金を1か月でも多く払うことで、年金受給額(老齢厚生年金、基礎年金)が多くなるメリットがあるので、目先の利益のために退職日を1日前にする必要があるのか疑問に感じています。

なお、扶養家族が多いなどの場合は、加入していた健康保険を任意継続することで保険料を下がる可能性があるので、以下関連記事で詳しく解説しています。

【関連記事】

退職後に社会保険の任意継続をした方が得になるパターンを解説

(下に続く)

その他清算

最後の給与の手取りが減る

実は意外な盲点が、この「その他清算」で、その中でも一番多いのが、前払い交通費の返却です。

多くの企業では、定期券代が安くなるように、6か月分(または、3か月)を前払いしています。(現物の定期券支給ならこの問題は起こりません)

例えば、10月分給与で10月~翌年3月までの6か月分の定期代を支給された場合、1月に退職したら、2~3月分として支払った定期代を返却しなければなりません。

1月当たりの定期代が3万円としたら、2か月分なら6万円を返却するので、最後の給与の手取りが6万円も少なくなってしまいます。

前払い定期券代に注意

会社は、3か月・6か月分の定期券代を前もって支給している

☞退職時には、前払い定期券代を返すため、手取りが減ってしまう

【関連記事】

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退職前にクレジットカードを作っておかないと後悔する理由とは?

(下に続く)

まとめ

いかがでしたでしょうか。

退職後は、引っ越しや転職活動など、何かとお金がかかると思いますが、最後の給与のからは、

  1. 住民税の一括徴収(1~5月退職)
  2. 2か月分の社会保険料(月末退職)
  3. 前払い定期代などの返却

上記の通り清算される金額があり手取り金額が減ってしまいますので、最後の給与を当てにして転職活動を考えていると、予定が狂ってしまいます。

特に、勤続年数が短く退職金がもらえない場合は、「最後に貰える給料は当てにできない」ことを知っていれば、事前に資金を貯めておくなどの対策が取れますから。

なお、退職してから転職活動をするときは、最低6か月分の生活費は準備しておくことをお勧めします。その理由は関連記事で解説しております。

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