(2020-7-25更新)
求人票の待遇面に「社保完備」と記載されているのを見たことがあると思います。
この「社保」とは社会保険のことで、完備とは加入できることを意味します。
ところで、社保完備されている会社についてどのようなイメージをお持ちでしょうか?
「まともな会社」
「従業員のことを考えている良い会社?」
社保完備されている企業に対して、良いイメージを持つと思いますが、「社保完備=良い会社」とは限らないのです。
それは、社会保険の仕組みが分かれば納得していただけると思います。
今回は、求人票の「社保完備」の意味とメリットを解説します。
社保完備とは
企業に社会保険の制度が整っていて、従業員がこれらに加入することができることをいい、具体的には次の5つの保険に入れます。
- 健康保険
- 介護保険(40歳以上)
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災保険
「働くなら、社会保険に入れる方がいい」とお考えの人もいると思いますが、実は、フルタイムで働く場合、一部を除いて加入が当然なのです。
具体的には、「法人事業所」や「個人事業所で従業員が5人以上雇っている(※1)」この場合、社会保険に加入しなければならないのですが、零細企業の一部は、加入ができていないのが実情です。
ということは、「社保完備は当たり前のことなのか?」と思ったかもしれませんが、会社組織なら当然のことで、個人事業主でも、5人以上従業員がいれば社会保険に入られなければならないものです。
(※1)個人事業所で従業員が5人以上雇っていても、理美容室やクリーニング店、清掃、運送、飲食店など加入適用外の業種があります。- 会社組織:社会保険に加入義務あり
- 個人事業主:加入義務あり(従業員5人未満の事業所除く)
それでは、社会保険の内容と自己負担額の目安を紹介します。
社会保険とは何か
社保完備は、5つの社会保険制度に加入できることが分かりました。
続いて、それぞれの保険制度について内容を説明します。
健康保険
全国健康保険協会や健康保険組合などが運営している医療保険のことで、入院や通院時の医療費が2~3割の自己負担で受けることができるだけでなく、入院医療費が高額になった時には、限度額を超えた分を支払ってもらうことができます。
また、加入者が出産した場合に「出産育児一時金」の支給や亡くなった場合に「埋葬料」が支給されます。
介護保険
介護サービスを受けた時に支払われる公的介護保険制度で、40歳以上(※2)になると保険料の納付をしなければなりません。
(※2)正確には、40歳の誕生日の前日が属する月から加入します。厚生年金保険
日本年金基金が運営している年金制度で、国民年金に比べて保険料が高額になりますが、その内訳は、「国民年金と厚生年金」の合計額を納めているからです。
このため、年金の受給が始まると、国民年金と厚生年金の両方から年金を受け取ることができますので、国民年金だけの人に比べて大幅に受給額が多いメリットがあります。
雇用保険
加入者が失業した場合、再就職までの間の生活補助さ就職支援として、失業保険の給付を受けられたり、職業訓練としてスキルや知識を学んだりすることができる制度です。
ただし、自分の意志で退職した場合は、失業保険を受けられるまでに3か月間の待期期間があるので、失業期間が長くないと受けられない場合もあります。
労災保険
仕事中や通勤中に事故やケガなどを負った場合に、保険金の給付が行われる制度です。
労災保険は、原則として労働者を雇った場合に加入しなければならないもので、保険料も事業者が負担します。ただし、個人経営の農林水産業では、危険でないなどの条件を満たすと例外として加入しなくてよい場合があります。
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加入条件は?
健康保険、介護保険、厚生年金保険
加入条件(その1)を満たすと加入しなければなりません。
所定労働時間(※1)が、社員の3/4以上
ただし、2か月以内の期間を定めて働く場合は除く
ただし、加入条件(その1)を満たさなくても、(その2)をすべて満たすことで加入されます。
- 所定労働時間(※1)が、週20時間以上(残業除く)
- 1か月の給料が、88,000円以上(残業代や交通費など除く)
- 1年以上の雇用見込みがある
- 学生ではない
- 従業員が501人以上の会社で働いている、または、従業員が500人以下の会社でも、労使間で社会保険に加入する合意あり
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雇用保険
雇用保険は、次の2つを満たすことが加入条件です。
- 31日以上の雇用見込みがある
- 週20時間以上の勤務
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労災保険
上記説明の通り、従業員を雇った場合は、原則として加入しなければならないものです。
労災は、会社側の義務として、保険料も全額会社負担で加入なので、従業員の負担額はありません。
メリットは?
社会保険は、保険料が高からという理由で、加入しないフリーターの人もいると思いますが、加入のメリットが分からないと入りたいと思いませんね。
社保完備のメリットは次の3つです。
老後の年金が増える
老後にもらえる年金は、国民年金より厚生年金の方が多いのです。
なぜかと言うと、厚生年金は「国民年金+厚生年金」の2つの年金に加入しているからなのです。
このため、払う保険料は高額になりますが、将来もらえる年金額は2倍以上になります。
【例】
- 平均月収43.9万円で40年間厚生年金に加入した場合
基礎年金6.5万円+厚生年金9万円=15.6万円 - 国民年金のみに加入した場合
基礎年金6.5万円のみ
厚生年金に加入した方が、2.4倍も受給できるのです。
保険料は会社が半分負担する
社会保険の保険料は、次の章で金額を紹介しますが、実は会社側が半分負担しているのです。
このため、労働者は半分の保険料で、保険制度を享受できるメリットがあります。
病気や障害時に保証がある
健康保険には、「傷病手当金」「限度額適用認定」「出産手当金」などの手厚い制度があります。
傷病手当金:業務外の病気やケガで4日以上働けなくなってしまった場合に、手当が支払われる制度です。
限度額適用認定:入院などで医療費が高額になった場合に、自己負担が一定の金額が上限になる制度です。
出産手当金:出産のために会社を休み、その間の給与が支払われなかった場合に、手当が支払われる制度です。
具体的には、出産前42日から出産後56日目までの間、会社を休んだ期間を対象出産手当金が支給されます。
社会保険料はいくら?
社会保険の保険料は、加入している保険組合や地域によって異なりますが、目安として以下の通りです。
健康保険料
住んでいる都道府県によって異なりますが、
協会けんぽの場合:約10%(労働者は半分の5%負担)
【東京都2018年】保険料は9.9%(労働者4.95%、使用者4.95%)です。
介護保険料
協会けんぽの場合:1.57%(労働者は半分の0.785%負担)
※全国一律
厚生年金保険
協会けんぽの場合:18.3%(労働者は半分の9.15%負担)
雇用保険
- 一般の事業:0.9%(労働者は0.3%負担)
- 農林漁業:1.1%(労働者は0.4%負担)
- 建設:1.2%(労働者は0.4%負担)
保険料負担額(合計)
社保完備では労災を除く4つの保険制度で保険料の負担が発生します。
健康保険、介護保険、厚生年金、雇用保険の自己負担の合計額は以下の通りです。
【40歳以上】
保険料は約15.2%
月20万円の給与だと、約30,400円の負担になります。
【40歳未満】
保険料は約14.5%
月20万円の給与だと、約29,000円の負担になります。
金額が大きく思えますが、いざという時に備える、保険制度というものです。
保険制度とは、元気な時に働いて得たお金で保険料を拠出して、何かあった時(保険事故と呼ぶ)に集められたお金から、保険金を給付することで成り立っていますので、生命保険や火災保険などと同じように、もしもの時に備えなければならないものです。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
「社保完備」は当たり前の制度であり、将来の保険として欠くことができない重要な制度ということがお分かりいただけたと思います。
また、給与支給額にたいする負担割合は、15%と覚えておけば手取り金額の計算にも役立ちますので、この記事を知識を生かして良い転職先が見つかることを期待しています。
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