(2020-7-18更新)
毎月の給与から税金や保険料が「当たり前のように」天引きされていので、意識したことない人もいると思いますが、そもそもどんな仕組みなのでしょうか?
「私たちに代わって、会社が税金を納めているのでしょ?」
会社が計算して税務署に納めているので手間がかかりませんが、毎月天引きされることなので知っておいて損はないですね。
今回は、源泉徴収の仕組みと、手続きが必要な場面を解説します。
源泉徴収とは
給与や報酬を受け取る給与所得者などに代わって、企業が給与や報酬の支払い時に、あらかじめ税金を差し引いて納税する仕組みをいいます。
源泉徴収というと、雇っている従業員に対してだけ行われるイメージがありますが、実は、個人の弁護士や税理士などへの報酬についても行うことがあるなど対象範囲は広いです。
従業員に代わって申告、納税する仕組み
日本国民には、「納税の義務」がありますので、収入があれば税務署に申告して税金を納めなければなりません。
本来ならば、会社から得た給与収入を確定申告して、自分で税金を納める必要がありますが、全員が確定申告をするとなると、えらく手間がかかるだけでなく、受け手の税務署側もパンクしてしまいます。
こういった事態を避けるために、「源泉徴収」として、会社が給与支払い時に税金を天引きして、従業員に代わって「申告」と「納税」を行うのです。
源泉徴収の流れ
入社時に扶養控除等申告書を提出する
新しい会社に入社したら、雇用契約や秘密保持契約、身元保証書など様々な書類を提出しますが、源泉徴収をしてもらうために「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出します。
- 扶養家族なし(独身など):住所、氏名、生年月日、世帯主の氏名・続柄
- 扶養家族あり:上記に加え、源泉控除対象配偶者、控除対象扶養親族
なお、それぞれ個人番号が必要なので、全員分のマイナンバーカードや通知カードを会社に持参します。
副業で働く場合
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、1か所にしか提出することができませんので、副業、Wワークなどで、給与を2か所以上から得ている場合は、主たる給与の支払者に提出しましょう。
- 主たる給与の勤務先:「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出
- その他の勤務先:提出できない
この場合、その他の給与支払者には、「給与を2か所から得ており、メインの会社に提出している」と説明すれば分かってもらえます。
主たる給与と副業では、源泉徴収税額が異なる
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を1か所にしか提出できない理由は、提出した場合としない場合で源泉徴収税額が異なるからです。
扶養控除等申告書を提出した場合は、「給与所得控除」や「扶養控除」などの各種控除を差し引いてから所得税を計算するため、税額が少なくなりますが、2か所目(副業先)では、これらの控除を受けることができませんので、所得税が高くなります。
【給与が15万円の場合、源泉徴収税額比較】
扶養控除等申告書を提出すると、「甲」の税額で計算されますので、給与が15万円で扶養親族がいない場合は2,980円ですが、扶養控除等申告書を提出しない場合、「乙」の税額で計算されるため8,700円も源泉徴収されてしまいます。
年の途中入社の場合、源泉徴収票を提出
転職などで、年の途中で入社した場合は、転職前の会社から源泉徴収票をもらって、これを新しい会社に提出します。
新しい会社に源泉徴収票を提出することで、12月支払いの給与で正しく年末調整をすることができるからです。
このため、12月頃に入社して、前の会社から源泉徴収票を貰うのが遅くなり、年末調整までに提出できなかった場合、その年の所得(給与収入)を自分で確定申告しなければなりません。
毎月の給与
会社が毎月源泉徴収を行い、税務署に税金を申告して納税してくれるので、給与所得者側は特に何もする必要はありません。
扶養家族の変動があったら手続きを行う
ただし、結婚や出産、子供が就職などして、扶養家族が変動した場合は、速やかに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出します。
また、所得税には関係ありませんが、新しい扶養家族の健康保険証を発行してもらうために、「健康保険被扶養者(異動)届」を提出することもお忘れなく!
年末調整
年末調整とは、1年間の給与収入から各種控除を差し引いて、その人の所得税を確定させて、税務署に申告と納税も行うことです。
大雑把にいうと、毎月の源泉徴収で「所得税の予定額」を天引きしておき、年末調整で最終確定させるというイメージを持っておくと分かりやすいです。
また、12月の給与では、年末調整により「3万円戻ってきた!」と得した気分になりますが、その理由は次で説明します。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 生命保険料などの控除証明書
生命保険などの控除証明書は、(会社経由で申し込んだ場合などで)保険料が給与から天引きされている場合は、保険会社から会社に控除証明書が送付されるので手続き不要です。
さて、年末調整で所得税が戻ってくる仕組みですが、毎月の源泉徴収では、
- 生命保険や損害保険控除
- 住宅ローン
などの控除が無い場合を想定して天引きされているので、これらの控除があれば、その分税金が還ってくる訳です。
詳しい仕組みは、次の記事で解説しているのでご覧ください。
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源泉徴収票の受領
年末調整が終わると、12月支給の給与に同封されて源泉徴収票が渡され、確定した納税額を確認することができます。
なお、最近は源泉徴収票も紙で交付する代わりに、電子データで交付する企業も多く、この場合は、指定されたホームページにアクセスしてダウンロードや印刷をすることで確認できます。
【関連記事】
会社員でも確定申告が必要な人は?
会社員で会社が源泉徴収をしてくれる場合でも、次に該当する場合は自分で確定申告する必要があります。
- アルバイトで20万円以上の給与を受けた
- アフィリエイト・副業などで20万円以上の収入があった
- 不動産を売却した
- 110万円を超える贈与を受けた
- 退職し年内に再就職しなかった
最近は、ブログやYoutubeなどで副収入がある人もいると思いますが、20万円以上の収入がある場合は確定申告しなければなりませんので注意してください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
企業で働いていると、毎月当たり前のように源泉徴収されて、年末調整で税金が還付されていると思いますが、仕組みが分かると賢くなった気分がしますし、扶養家族が増えたり減ったりした時にも、手続き漏れが無くなるメリットがあります。
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退職した時に確定申告しましたが、あの手間を労務さんがしてくれてるんですね。
在職中は労務の方々が申告してくれたから有難みが分からないですが、退職して自分で確定申告をすると、その大変さが身に染みて分かりますね。
住宅ローン組んだときに確定申告しましたが、煩雑で手間だった記憶があります。
源泉徴収では、同じてまを会社がしてくれてたんですね。改めて大変さがわかりました。
自分で手続きをしてみて初めて分かったことってありますね。
実際に、会社の労務・総務部門では、年末になると源泉徴収が「一大イベント」としてのしかかってきます。
お金が絡んでいるので、間違えないように正確に処理するのが意外に大変なんですよ。