(2020-7-11更新)

フレックスタイム制度ついて、どのようなイメージをお持ちですか?

時差通勤で満員電車を避けられる

深夜まで働いて昼頃に出社している人がいる

自由な勤務時間というイメージがあるため、フレックスタイム制でない人からは、羨望(せんぼう)の眼差しで見られてしまいますね。

ただし、フレックスタイムは良いことばかり強調されますが、残業手当が減ってしまうデメリットもあるのです。

今回は、フレックスタイム制度の仕組みを分かりやすく解説します。

フレックスタイム制とは

フレックスタイム制度

労働者が、始業・終業時間を自分で決めることができる制度のことで、仕事やプライベートの都合に合わせて出社・退社時間を決められる反面、労働時間や仕事のスケジュールを自分で管理する必要があります。

また、みんながバラバラに出社・退社されると部門内のコミュニケーションが図れないため、「この時間は全員出勤する」というコアタイムが設定されることがほとんどです。

フレックスタイムの仕組みは?

通常の勤務体系では、9時出社18時退社の1日8時間(1週間40時間、月160時間)などと始業・終業時間や出勤する日もカレンダーなどで定められています。

ところが、フレックスタイム制では、一定の期間(1か月など)で「総労働時間」を定めて、その期間の労働時間を集計して、超過勤務があれば時間外手当の計算となります。

このため、出社時間や退社時間が自由だけど、しっかりと自己管理をしなければならない制度です。

フレックスタイム制度と通常労働の比較

フレックスタイム制度の仕組み

コアタイムとは?

出社していないといけない時間帯のことで、お昼を挟んだ10:00~14:00頃に設定する企業が多いです。

みんなが自由に出社・退社時間を決めてしまうと、午前中で帰る社員と午後出社の社員がいたら、お互いの顔を合わすことが無くなってしまいます。

また、定例会議や部署内のミーティングができなくなってしまうので、「この時間は出社していること」という時間帯が必要になる訳です。

フレキシブルタイムとは?

自由に出社・退社をすることができる時間帯です。

この図の例では、10;00までに出社すればよく、14:00以降はいつでも退社することができます。

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働き方改革で清算期間が3か月に

2019年4月からフレックスタイムの清算期間が、「1か月以内」から「3か月以内」まで拡大されました。

これにより、「今月は決算期で忙しいが、来月は暇がある」などの季節変動に応じた柔軟な働き方が可能になり、繁盛期に多く働き、閑散期にその分休んだり、子供の夏休みなどに合わせて休んだりすることができます。

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残業手当の計算

フレックスタイムの清算期間を3か月にすると、残業手当の計算がややこしくなるのが難点です。

通常勤務者は、1日8時間または、週40時間を超えると残業手当を支払わなければなりませんが、フレックスタイム制度対象者の場合、総労働時間に対して超過した時間の残業手当を支払うことになります。

清算期間が1か月の場合
  • 総労働時間:160時間
  • 実際の労働時間:180時間
  • 時間外手当:20時間

清算期間が3か月になると、3か月を合計して時間外手当の計算が行われます。

ただし、単月で週50時間平均(月45時間超過が目安)を超えた場合は、その月ごとに時間外手当の計算をしなければなりません。

清算期間が3か月(4~6月)の場合
  • 総労働時間:480時間(4月200時間、5月200時間、6月160時間)
  • 実際の労働時間:560時間
  • 時間外手当:80時間
    (6月に80時間残業した扱いなるので、60時間を超過分は50%の割増賃金が必要!)

時間外手当の計算が、清算月(6月)に行われるので、50%の割増賃金が発生しやすくなるだけでなく、100時間を超えてしまうと、「労働基準法の時間外労働の上限規制違反」になるので注意が必要です。

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メリット

フレックスタイム制度は、労働者に自由で柔軟な働き方をすることができるので、次のメリットが考えられます。

  • 勤務時間を自分で決めることができる
  • 休暇を使わずプライベートの用事に対応できる
  • メリハリのある労働をすることができる

デメリット

逆に、フレックスタイムならではのデメリットがあるので、あらかじめ知っておく必要があります。

  • 他の社員と顔を合わせる機会が減り、コミュニケーションが疎かになりがち
  • 朝礼やミーティング出席のため、勤務時間の自由度が減る場合がある
  • 業者やお客様対応で、結局通常の勤務時間に出社せざるを得なくなる
  • 夜遅くまで働いて、翌日寝坊するパターンに陥りやすい?
  • 残業手当が減ってしまう可能性がある

面白い事例で、フレックスタイム制度の職場なのに、朝9時から朝礼があるため、結局みんな朝から出社していて、「フレックスタイムの意味がない」なんてことは、多くの職場で当てはまるかもしれませんね。

また、閑散期に早く帰るため、トータルの労働時間が少なくなりやすいため、残業手当が減る傾向があります。(企業側のメリットになります)

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残業手当はどうなるの?

フレックスタイム制度と残業手当は別制度なので、「フレックスタイムだから残業手当が出ない」ということはありません。

ただし、「月給25万円(月20時間分の残業手当を含む)」など、あらかじめ給与に残業手当含まれている場合もあるので、自分の労働条件をよく確認しておきましょう。

総労働時間に満たなかったら?

労働時間を自分で管理するとなると、病気などの不慮の出来事や計算ミスなどで、実際の労働時間が総労働時間よりも短くなってしまうこともあるかもしれません。

この場合は、次の2つの方法で清算する必要があります。

  • 不足時間分の賃金を控除する(欠勤と同じ扱い)
  • 不足時間を、次の清算期間の総労働時間に上乗せ

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導入には2つの手続きがある

フレックスタイムは便利な制度ですが、会社側が勝手に導入することができず、次の2つの手続きを行う必要があります。

1.労使協定で定める

「労働組合」や「労働者の過半数を代表する社員」とフレックスタイムについて、以下の内容の協定を結ばなければなりません。

  1. フレックスタイム制度の対象者
  2. コアタイムとフレキシブルタイム
  3. 清算期間
  4. 総労働時間
  5. 1日当たりの標準的な労働時間

企業の独断でフレックスタイム制度を導入されてしまうと、労働者に不利になる恐れがあるため、事前に労働者と合意してから導入してくださいという趣旨です。

2.就業規則に明記する

就業規則

続いて、労使協定で定めた5項目を「就業規則」に明記しなければなりません。

上記の手続きを踏むことで、フレックスタイム制度を導入することができます。
ただし、フレックスタイムの清算期間が1か月を超える場合、労使協定を労働基準監督署長に届出なければなりません。なければなりません。

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まとめ

いかがでしたでしょうか。

フレックスタイム制度は、柔軟な労働ができる優れた制度です。

特に、繁盛期と閑散期がハッキリしている場合には、閑散期に「仕事が少ないのに会社にいなければならない」事態を避けることができるので、働く側だけでなく、企業側も残業手当が減らせるメリットがあります。

ただし、管理人の勤めていた会社にもいましたが、夜中まで働いて、翌朝寝坊のパターンに陥ってしまい、単に「出社・退社時間が後ろにスライドした」こんな勤務をしないように気を付けましょう。

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