(2020-7-14更新)

 

転職活動で求人票を見ていると「シフト勤務」という制度をよく見かけますが、アルバイトのシフトと勘違いしてしまいますね。

「自分で勤務時間を決めることでしょ?」

アルバイトでは、出勤希望日時申告のことを「シフト提出」といいますが、社員・契約社員の募集で見かけるシフト勤務は、働きたい日を自分で決めることはできません。

シフト勤務制度は、工場や病院など24時間休むことができない場所では必須の仕組みなのです。

今回は、シフト勤務の具体的な仕組みとメリット、デメリットを解説します。

シフト勤務とは

交代勤務のことで、働く時間帯や曜日が固定されておらず、1週間などの一定期間で勤務時間帯が移動する勤務制度です。

例えば、従業員を2グループに分け、1週間ごとに昼間と夜間を交代で働くなどの勤務が行われています。

シフト勤務制度の例

なお、夜勤のみの勤務など、勤務時間帯が移動しない場合は、シフト勤務とは言いません。

サービス提供や顧客対応が可能になる

シフト勤務が行われる理由は、病院や宿泊施設、警備など24時間体制で顧客サービスが必要だからで、もし、通常勤務で対応するとなれば、従業員に長時間労働を強いることになり、心身ともに疲弊してしまうからです。

また、民間企業だけでなく、警察や消防など公務員もシフト勤務が行われているので、特殊な制度というものではなく、多くの人たちがシフト勤務で働いています。

ちなみに、アルバイトのシフト提出は、「前もって出勤希望日を提出すること」で、シフト勤務とは名前が似ていても全く別物です。

主な勤務体制

2交替制

昼夜を問わず従業員を必要とする場合に行われ、24時間操業している工場や顧客対応が必要なサービス業に多い勤務体系です。

2交代制では、24時間を2~3班(グループ)に分け、12時間ごとに交代する場合が多いので、通常労働に加え時間外労働が発生することになります。

  • 2班で行う場合
    1週間ごとに日勤と夜勤を交代で行う方法が代表的なパターンで、例えば、月~金まで日勤で働き、翌週月~金まで夜勤の繰り返しです。(土日休み)
  • 3班で行う場合
    土日関係なく、連続操業する場合に行われることが多く、4日間日勤で働き、2日休んで、4日間夜勤の繰り返しで行われることが多く、「4勤2休」などと呼ばれます。

労働者にとっては、深夜に働くことと1日当たりの労働時間が長いので体力が必要ですが、深夜手当と残業手当が多く入るため、「稼げる勤務体制」とされています。

逆に企業側は、少ない労働者で24時間体制を組めるメリットがありますが、多くの時間外手当を必要とするデメリットがあります。

3交替制

2交代制と同様に、24時間従業員を必要とする場合に行われますが、こちらは24時間を3等分して8時間ずつの勤務となるため一回当たりの勤務時間が短い制度です。

  • 3班で行う場合
    1週間ごとに「日勤→準夜勤→深夜」を交代で行う方法が代表的なパターンで、例えば、月~金まで日勤で働き、翌週月~金まで夜勤、翌々週月~金まで深夜勤の繰り返しです。(土日休み)
  • 4班で行う場合
    土日関係なく、連続操業する場合に行われることが多く、「日勤→準夜勤→深夜」の勤務を、3日間働き1日休むを繰り返しで行われる「3勤1休」のパターンと、5日働き1~2日休むを繰り返し行われるパターンなどがあります。

労働者にとはっては、1日当たりの労働時間が8時間程度と短いメリットがありますが、残業手当が発生しない勤務体制なので、「交代勤務なのに手取りが少ない」と感じるかもしれません。

では、企業側は残業手当が必要ないのがメリットと思われがちですが、その分従業員を多く雇用しなければならないので、必ずしもコスト的に優れているとは言い切れません。

シフト勤務のメリットとデメリット

シフト勤務は、労働者も企業側にもメリットとデメリットがありますので、手放しで喜んではいられません。

メリット

シフト勤務のメリット

労働者の負担軽減

通常勤務で顧客対応を行おうとすると、どうしても労働者に長時間勤務をさせてしまうことになるので、従業員の健康被害が起こってしまいます。

働き方改革でも長時間労働が問題視され、「時間外労働の上限規制」が導入されるなど、労働時間の短縮は重要な課題となっています。

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平日昼間に休める

シフト勤務をしていると、平日の昼間に役所や銀行、買い物をしたり、空いている平日に旅行をしたりすることができます。

特に、人気のテーマパークに週末に行くと混んでいてうんざりしてしまいますが、平日に行くことで好いていて快適に楽しむことができるかもしれません。(もちろん、みんな同じことを考えるので平日でも混雑していることも・・・)

人件費削減

従業員に時間外労働をさせると、次の通り通常の賃金に加えて割増賃金を払わなければなりません。

  • 月60時間まで:25%
  • 月60時間超過分:50%

これだけの割増賃金を払うよりは、交代制勤務を導入して残業手当を削減させたいと考えるのではないでしょうか。
なぜなら、交代制勤務の方が、一人当たりの時間外労働時間を減らすことができるからです。

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24時間サービスの提供

自動販売機なら、24時間無人でモノを売り続けることができますが、人間が対応しないといけない場合は、シフト勤務を導入しないと、24時間絶え間なくサービスの提供をすることができません。

夜間や深夜、土日など、お客様がサービスを必要とする業務では、交代制が必須の勤務体系です。

設備の効率的な活用

工場では、高額な機械を導入しているので、少しでも多く稼働させることで費用を回収する必要があります。

例えば、日中だけ12時間稼働させるよりは、昼夜で24時間稼働させて多くの製品を作ることでコストを下げることができるので、シフト制勤務を導入して24時間動化したいと考えます。

コスト以外の面でも24時間稼働させたい理由があります。例えば、工場用機械は「休み休み」動かすよりは、連続して動かし続けていた方が安定した生産をすることができる場合が多いので、24時間操業が好まれます。

(下に続く)

デメリット

シフト勤務のデメリット

健康被害

労働者にとっては、勤務時間が固定されていないのが精神的・肉体的にキツイです。

特に、日勤と夜勤を繰り返して働くと、身体がついていかなかったり、寝付けずに睡眠不足になったり、疲労がなかなか回復できない人もいると思います。

労働者にストレスの溜まる勤務体系であることを考慮して、企業はカウンセリングやメンタルヘルスなどを行い、労働者の心身の異常に向き合うことが必要です。

先の予定が分からない

例えば、「半年後に海外旅行をしたい」「結婚記念日にレストランの予約をしたい」など、半年~1年先の予定を立てたい時に、長期の勤務予定表が出ていない場合は、予定が立てられなくて困る場面があります。

もちろん、有給休暇を上手に活用すればいいのですが、通常勤務者のように、土日プラス有給2日で3泊4日の旅行という計画は、勤務予定表が出るまでできないことが欠点ではないでしょうか。

労働者を多く雇用する必要がある

人件費の削減をメリットで挙げましたが、交代制の最大のデメリットは、「人を多く雇用する必要がある」ことです。

長期的にシフト勤務を続けるのであれば、多くの労働者を雇用しても問題ありませんが、事業縮小や工場閉鎖などの事態が起きた場合、解雇か配置転換などを行わなければならないので、企業にとってはリスクがあります。

労働者の確保が困難

人手不足が叫ばれて、政府も外国人の労働者の受け入れなどを検討していますが、日勤の仕事でも人が集まらないで苦労しているのに、夜間の勤務や変則的なシフト勤務に人が集まる訳がありません。

このため、企業はシフト勤務者に対して「手当」を上乗せ支給したり、職場環境を改善したり、あの手この手で労働者を集めようとしていますが、労働者不足はなかなか改善できないのが現状です。

各種手当がかかる

交代制勤務では、22時から翌朝5時までに勤務した場合、25%深夜手当を払わなければなりません。

また、会社によって名称はことなりますが、「夜勤手当」「交代制手当」などの名称で、上乗せで手当を払うことが通常です。(アルバイトの場合は無いことも)

例えば、日曜日や深夜に労働した場合、勤務1回当たり3,000~5,000円程度の手当が払われていることが多いです。

これは、日勤だけの通常労働に比べて身体への負担が多いので、「他の労働者との公平性を保つため」、「給与を多く払わないと人が集まらない」といった理由があるからです。

(下に続く)

企業の健康管理義務

健康診断

健康診断

企業は、深夜の労働者については6か月ごとに1回、医師による健康診断を行わなければなりません。労働者はその健康診断を受ける必要があります(労働安全衛生法第 66 条)

これは、深夜の労働は身体に悪影響を及ぼす可能性があるため、早期に身体の異常を発見するひつようがあるからです。

深夜に働くことができない人

労働基準法では、深夜(22時~5時)に働かすことができない労働者がいます。

  • 満18歳未満
    (ただし、16歳以上の男子については、交代制などの場合働かせることができます)
  • 妊娠中および産後1年未満の女性が請求した場合
(下に続く)

まとめ

いかがでしたでしょうか。

シフト勤務は、サービス業や工場などの業種では欠くことのできませんが、労働者にとっては健康被害が付きまとってしまうので、一長一短ある制度といえます。

求人票では、制度の内容をしっかり理解したうえで、メリットとデメリットを分かった上で応募して、入社後の思い違いのないようにしましょう。

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