(2020-6-24更新)
内定をもらい入社準備をしていたが、雇用契約書に気になる記載があった。
「試用期間6か月」
正社員で採用されたはずなのに、お試し期間があるのは「何故?」と思ってしまいますね。
実は、多くの企業では「試用期間」という名目で、採用した人が「本当に業務遂行能力があるか?」を見極めることがあるのです。
でも安心してください。
試用期間だからと恐れることはありません。
今回は、試用期間の仕組みと誤解されやすいポイントを解説します。
目次
試用期間とは
新規採用後に仕事の適性有無を確認するための期間で、問題が無い場合は期間後に「社員」として採用される制度をいいます。
企業側には、経験やスキルがあるから採用したのに、「実際に仕事をさせてみたら全くできない」こんな人だったら困ってしまいますので、適性を見極めることができるメリットがあります。
また、雇用者側にも会社の雰囲気や人間関係などを確かめてから本採用に切り替えられますので、双方にメリットがある制度といえます。
期間は3~6か月程度が多い
試用期間は、法律で何か月と決まっているものではなく、企業が独自に決めることできますが、3~6か月間が多いです。
ただし、いくら企業が自由に決められるからと言って、6か月を超える期間は、明確な理由がある場合を除き、長すぎると思われます。
延長は合理的理由が必要
一度決めた試用期間を自由に延長可能としてしまうと、いつまでも試用期間で働く人が出てきてしまいます。
本来は「仕事の適性があるか」を確認する期間なので、数か月もあれば確認が終わる性質のものなので、だらだらと延長させることは、「試用期間という不安定な状態で」都合よく雇っていると疑われても仕方ありません。
このため、期間の延長が認められるためには、2つの条件を満たしている必要があります。
- 就業規則(または、雇用契約)で延長が明記されている
- 延長するだけの合理的な理由がある
例えば、病気やケガなどで休みを取ってしまったため、「適性」があるか判断することができなかった、など合理的な理由がなければ、安易に延長は認められません。
ただし、合理的な理由があったとしても、延長期間は、最初の雇い入れ時から1年間が限度と考えられています。
試用期間の3つの誤解
給与は安いが当然ではない
「試用期間だから給与は下げる」
試用期間とは「仕事の適性があるか無いかを確認」する期間ですから、本採用時と給与が同じであるべきです。
ただし、どうしても給与を下げる必要がある場合は、使用者と労働者が合意していなければならず、合意が無いまま一方的に給与を下げてはいけません。
給与減額が認められるための条件は、次の通りです。
- 雇用(労働)契約書などで減額の合意がされている
- 減額後も最低賃金を下回らない
いつでも解雇できるはウソ
「試用」という名前から、いつでも自由に解雇ができると勘違いされがちですが、そのようなことはありません。
確かに、通常の解雇よりは認められる範囲は広いとされていますが、「社風と合わない」「仕事が遅い」などの理由では解雇は認められません。
このため、試用期間の解雇が認められるためには、次のような明確な理由が必要です。
1.遅刻・欠勤が多い
社会人として働く上で、遅刻や欠勤をしないことは最低限のルールであり、これが守れないようでは企業から不適格と判断されてしまいます。
遅刻や欠勤などの「勤怠不良」は、実は正社員も解雇事由としている会社が多いです。
もちろん、解雇するためには「何度も注意したが改善されない」など、会社側も改善に向けた努力が必要です。
2.応募書類に経歴詐称など嘘の記載があった
履歴書や職務経歴書などの経歴詐称は、いかなる場合でも許されません。
社会人は信用が重要なので「嘘をつく」人間は、会社が最も嫌うため、ほとんどの企業が正規採用後も「解雇事由」としているので、試用期間に関わらず解雇される理由です。
3.勤務態度が悪い
勤務態度の良し悪しは、客観的に判断することが難しいですが、次のような内容が悪い態度とされています。
- 上司の指示に、何度も従わないことがある
- 職場の雰囲気を、明らかに壊す
試用期間の解雇も予告手当が必要
上記の解雇が認められる理由があったとしても、「明日から来なくていい」という訳にはいきません。
通常の労働者の解雇と同じように、予告(手当)が必要です。
- 30日前の予告
- 30日分の平均賃金
ただし、雇い入れから14日以内に解雇する場合は、予告手当は不要です。(労働基準法第21条)
社会保険に加入できないはウソ
「試用期間は社会保険無し」
このように考える人もいるかもしれませんが、社会保険の加入基準に「正社員」「試用期間」「パート」「アルバイト」などの雇用形態は関係ありません。
基本的に、「フルタイムの4分の3以上」働く場合は、2か月未満の短期雇用を除いて、社会保険に加入しなければなりません。(個人事業主除く)
なお、労災保険は、基本的に「1人でも雇ったら加入」することが義務付けられています。
詳しい加入基準は、以下記事で解説しています。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
試用期間制度について、誤解されていた人もいると思います。
「試用」という名前に惑わされて、「お試し雇用」と思われがちですが、本採用とほとんど変わりはない採用形態です。
もし、あなたが試用期間中だったとしても、怖がることはありません。
普段通りの勤務をしていれば、期間満了後に本採用の道が開かれているのですから。
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