(2020-7-16更新)

何かと分かりにくい制度のひとつに「育児休業制度」があります。

出産後に子供が保育園に入るまでは、祖父母が面倒を見てもらえる場合を除いて、両親が付きっきりで育児をする必要があるので、会社を休まざるを得ません。

その時にお世話になるのが育児休業制度なので、出産前にどんな制度なのか把握しておきたいですね。

法改正があったり、手続きが面倒だったりしますが、大切な子育て支援制度なので、しっかりを理解して活用したいですね。

今回は、育児休業制度と給付金の申請や金額について解説します。

育児休業制度とは

育児休業制度とは

子育てをするために会社を休むことができる制度で、子どもが1歳になるまで(2歳まで延長可)給付金を受け取ることができます。

この育児休業は、会社が任意に認める制度ではなく、育児介護休業法(※1)に定められた労働者の権利です。

出産前後は、産休制度(産前6週間、産後8週間)で休むことができますが、育児休業は産休後の子育てのための休業という位置付けです。

(※1)育児介護休業法:「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の略で、労働者が育児や介護をするために事業者が行う措置と、支援措置を定めた法律です。

給付金はいくら?

休業中は、会社からの給与が支給されなくなりますが、代わりに国から育児休業給付金が支給されます。

給付金は、休業前の給与を基準に算出して支給されます。

  • 最初の6か月間:67%
  • 7か月目から:50%

休業前の給与は、過去6か月の収入の合計金額から1日当たりの平均収入を算出して求められます。

社会保険料の免除

育児休業給付金の67%では心もとないと思うかもしれません。
たしかに、金額は少なくなりますが、実は2つの恩恵があるので、少しは手取りを増やすことができます。

  • 所得税非課税
  • 社会保険料免除(健康・介護保険、年金、雇用保険)

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支給は2か月に1回

実は、給付金は毎月もらえるものではなく、2か月に1回振り込まれます。
2か月に1回、2か月分が振り込まれるのは、出産でお金がかかっている時期に辛いものです。

初回支給は育休開始から2か月半後

なお、実際の入金日は「2か月後+半月」かかり、2回目からは前回振込日の2か月後が目安です。

対象者

育児休業制度は、原則的に子どもが1歳に満たない場合に利用できますが、次の条件に該当すると対象外となってしまいます。

  • 勤続1年未満(雇用保険加入が12か月未満)
  • 子どもが1歳6か月になるまでに、雇用契約が終了することが明らか
  • 1週間の労働日数が2日以下

契約社員でも大丈夫

契約社員で、育児休業を諦めている人もいるかもしれませんが、利用できることが多いです。

例えば、1年ごとに契約更新する場合でも、「契約更新の可能性」があれば、「子どもが1歳6か月になるまでに、雇用契約が終了することが明らか」に該当しないので、育児休業を取得することができます。

休業期間は2回延長可

育児休暇は、子供が1歳になるまで取得できる制度ですが、次の条件を満たせば1歳6か月(2回目の延長で2歳まで)になるまで休業期間の延長が可能です。

  • 子どもが保育所に入所できないとき
  • 子どもを育てる予定だった人が、病気などで育てることが難しくなったとき

2017年10月からは、子どもが1歳6か月になっても、上記が解消されない場合、2歳になるまで延長が可能になりました。

(下に続く)

手続き

育児休業制度

初回手続き

休業するための手続きは、基本的に会社が行いますが、産休に続いて育児休業を希望する場合は、産休に入る前に会社に申請をしておくと安心です。

早めに会社に伝えるメリットは、会社も準備する書類があるからで、また、育児休業に慣れていない会社の場合、手続きに時間がかかる恐れがあるからです。

具体的には、次の書類をハローワークに提出します。

「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」

出典:ハローワーク「育児休業給付の内容及び支給申請手続について

※本人も記入する箇所がありますので、産休前に提出書類を書くことをおススメします。

2回目以降(給付ごとに)

実は、給付金をもらうために、毎回申請をする必要があります。
申請書は、会社経由でハローワークに提出します。

「育児休業給付金支給申請書」

日本年金機構への手続きも忘れずに

上の給付金の所で「社会保険料が免除される」と書きましたが、保険料を免除してもらうためには、年金機構へ手続きが必要です。

もちろん、会社が手続きをしてくれますが、次の書類を提出します。

「育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届」

出典:日本年金機構「育児休業を取得したときの手続き

(下に続く)

注意事項

禁止事項

せっかくよい制度があっても、企業が取得に理解を示さなかったり、休業した従業員への差別を許してしまっては、休業をためらってしまいます。

このため、育児休業を取得した労働者に対して、次の事項は禁止されています。

  • 解雇すること
  • 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
  • 正社員をパートタイム労働者等の非正規雇用社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
  • 労働者が希望する期間を超えて、その意に反して所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限又は所定労働時間の短縮措置等を適用すること
  • 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと
  • 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと

出典:厚生労働省「育児・介護休業制度ガイドブック

育児休業明けの従業員に対する取り扱い

育児休業から会社に復帰しても、依然と同じようにフルタイムでバリバリ働くまでには時間がかかります。
このため、労働者が希望した場合、企業は次の内容を認めなければなりません。

  • 育児時間(生後1年未満、1日2回30分以上)
  • 育児短時間勤務制度(3歳未満の間)
  • 所定外労働の制限(3歳未満の間)
  • 時間外労働の制限(小学校就学未満の間、 1か月24時間、1年150時間まで)
  • 深夜業の制限(小学校就学未満の間)
  • 子の看護休暇制度(小学校就学前の子1人の場合5日、2人以上の場合10日、1日又は半日単位)
(下に続く)

まとめ

いかがでしたでしょうか。

育児休業制度は、子育てにはなくてはならない制度です。
制度をよく理解して、給付金の貰い忘れなどがないようにしましょう。

なお、出産を控えていて転職を検討している場合、次の理由から転職は見送るべきです。

それは、入社後1年を経過しないと育児休業制度が利用できないからです。

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