(2020-7-16更新)
企業で働いていると、業務中に不慮の事故に巻き込まれることや、通勤中にケガをすることもあるかもしれません。
そんな時、ケガの痛みはだれにも分からない辛さがありますが、せめて見舞金が支払われれば救われますが、会社が労災に加入していなかったらどうなってしまうのでしょうか?
「労災に入ってない時は自腹?」
仕事中のケガなのに自腹で通院するのはたまったものではありませんね。
今回は、会社が労災に加入していないで病気やケガをしてしまった場合の対処法を解説します。
労災保険とは
労働者災害補償保険の略で、業務や通勤中にケガや病気になった場合に、本人か遺族に給付を行う制度です。
労働者災害補償保険法に基づき、業務災害及び通勤災害に遭った労働者又はその遺族に、給付を行う公的保険制度である。
加入義務
では、労災保険に加入するための条件ですが、
「労働者を1人でも雇ったら加入しなければならない」
他の社会保険と異なり、「週に20時間以上」などの条件はないので、正社員やハート、アルバイトなど雇用形態に関わらず、全員が加入(※1)しなければなりません。
(※1)労災は労働者を守るための保険なので、使用者や役員は加入することはできません。ただし、取締役兼工場長などで「指揮を受ける側」の人は、保険適用が認められる場合があります。余談ですが、中小企業では社長も現場で働くことが多く、ケガをする可能性があるため、特例で加入(特別加入)することができます。
厚生労働省:「労災保険への特別加入」
保険料は全額会社負担
さて、企業で雇われたら労災に加入義務がある事が分かりましたが、保険料はいくらでしょうか?
労災保険率は事業の種類(危険度)により、給与の0.25%~8.8%と幅があります。
ちなみに、最高額の8.8%は「金属鉱業、非金属鉱業」で、採掘をするからケガの可能性が高いのでしょうか。
ただし、給与明細には「労災保険料」という記述はありません。
全額会社負担だからです。
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未加入で事故が起きたら?
会社が未加入でも、業務・通勤中にケガや病気になったら、労働者は給付金を受け取ることができます。
これは、加入しないのは企業の責任であり、災害に見舞われた従業員には、何ら責任が無いからです。
手続きは?
手続き方法は、労災指定病院(※2)とその他の病院とで異なりますので、分けて解説します。
【労災指定病院の場合】
労災指定病院に通院・入院する場合は手続きが簡単で、申請書(給付請求書)を病院に提出するだけで、病院が代わりに手続きをしてくれて、さらに、医療費を払う必要もありません。
- 「療養補償給付たる療養の給付請求書_業務災害用」を病院に提出する
- 医療費の支払いは不要になる
【その他の病院の場合】
指定病院以外に通院・入院した場合は、申請書を自分で労働基準監督署に提出しなければならず、また、医療費も「一旦立て替え払い」する必要があります。
- 一旦、医療費を立て替える
- 「療養補償給付たる療養の給付請求書_業務災害用」を、直接労働基準監督署に提出する
- 立て替えた医療費が支払われる
労災の請求書は30種類もある
労災給付の請求書は、「業務災害」「通勤災害」「障害」「遺族」など30種類もの書式があるので、災害の内容に沿ったものを使う必要があります。
以下に、厚生労働省の請求書ダウンロードページのリンクを載せますので参考にしてください。
厚生労働省:「労災保険給付関係請求書等ダウンロード」
健康保険証は使わないこと
業務中や通勤災害で医療機関にかかる時は、健康保険証は使えませんので気を付けてください。
健康保険は、私的な病気やケガで使うものであって、業務上の災害では使ってはいけないことになっています。
健康保険を使ってしまったら?
もし、指定病院以外で診療を受けて、「いつものクセ」で健康保険証を出してしまったら、どのようにすればよいでしょうか。
- 指定病院で、健康保険から労災保険に切り替える手続きをする
- 自己負担分が返還される
※診療から期間が過ぎてしまったらできない場合があります。(その場合、下の方法で行います)
- 健康保険組合に連絡する
- 納付書が送られてくるので支払う
- 労働基準監督署へ給付請求書を提出
- 負担した医療費が支払われる
手続きが面倒なので、医療機関にかかる時、問診などで「労災」と伝えるようにしましょう。
未加入企業はコンプライアンスの意識が低い
労災保険は、労働者を雇ったら加入しなければならないものですが、中には断固として加入しない経営者もいるようです。
恐らく、費用の負担があるから加入しないものだと思われますが、加入義務があるものを加入しないという経営者は、コンプライアンス意識が低いと言わざるを得ません。
そのような経営者の下では、労働者をコキ使ったり、サービス残業させたりと、ブラックな面があるのではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
長い間働いていれば、危険な目に合うこともあると思います。
誰だって、ケガをしたい人はいませんが、どうしても不慮の事故に遭ってしまったら、休業補償や治療代はしっかりと払ってもらわないと、生活が成り立たなくなってしまいます。
労災の仕組みを知っていれば、いざという場合でも落ち着いて行動ができるのではないでしょうか。
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