(2020-7-23更新)

12月になると「年末調整」で税金が還ってくるので、年末年始を迎えるときにプチボーナスとして期待している人もいると思います。

3万円戻ってきた

なぜ税金が還ってくるの?

還ってくるということは、払い過ぎているからなのですが、「なぜ払い過ぎているか」そもそも仕組みがよく分からないですね。

今回は、年末調整の仕組みと税金が還ってくる理由を解説します。

年末調整とは

源泉徴収票

会社が従業員に代わってその年の所得税を計算し、税務署に申告と納税を行うことです。

国民は納税の義務があるので、本来は自分で確定申告をして所得税の納税を行わなければならないのですが、徴収の簡素化や税務署の負担軽減などのため、確定申告に代わる方法として年末調整が存在します。

年末調整できる人できない人

会社が所得税の申告をしてくれるので便利な制度ですが、年末調整を受けることができない人もいますので、その場合は自分で確定申告をしなければなりません。

  • 給与の総額が2,000万円を超えた
  • 年の途中で退職して年内に就職しなかった
  • 海外勤務している(出国前の給与は年末調整できる)

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なぜ税金が還ってくるのか?

毎月の給与から天引きされている

働いている人にとっては当たり前のことですが、会社から「お給料」が払われても、全額銀行に振り込まれることはありませんね。

例えば、給与支給額が25万円だった場合、振り込まれるのは20万円ほどしかありません。私たちは、銀行振り込み額のことを「手取り」と呼んでいます。

給与と手取りの差額の5万円は、「天引き」と呼んでいて、会社が私たちに代わって税金を納めたり社会保険料を納めたりしてくれるものなので、会社の手元に残るものでもありません。

天引きで引かれる所得税は仮なもの

給与天引きの内訳

上の図では、天引きされる所得税が「源泉所得税」と書いてあるのは、実は、この所得税は

この給与ならこれくらいの所得税

という暫定的な税金なのです。

源泉徴収税額表

例えば、(社会保険料を引いた後の)給与が20万円の場合、扶養家族がいなければ4,770円、1人なら3,140円と一律に決められています。

この金額を徴収しておけば不足はないだろう

個別の事情に関わらず、国民から一律に所得税を徴収しておくのが源泉徴収というわけです。

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(下に続く)

年末調整の役割は?

さて、12月になると本題の年末調整を行います。

労務部門が猫の手も借りたいほど忙しくなる年末調整とは、具体的に次の5つを行っています。

  1. 従業員の給与やボーナスを合計し、年収を算出する
  2. 支払った社会保険料や、生命保険や損害保険などの各種控除を合計する
  3. その人が本来納める「所得税」を確定させる
  4. 「源泉徴収された所得税」-「正しい所得税」=差額を返金か徴収
  5. 源泉徴収票の発行

つまり、本来納めるべき所得税を計算して、仮に天引きした源泉所得税との差額を返金する作業をしているのです。(不足の場合は徴収しますが・・・)

年末調整の時期になったら、生保や損保から送られてくる「○○保険料控除証明書」を会社に提出するのも、これらの保険料が所得税から控除(※1)することができるので、納める所得税が少なくなるからです。

(※1)控除とは、所得(年収)の合計額から差し引くことができる金額で、この差し引かれた金額分、収入が少なかったことになります。

毎月の源泉徴収では、個別に生命保険や損害保険に加入していないものとして税金を天引きしますので、生保・損保などに保険料を払っている人は、「払い過ぎ」になるため、年末調整で帰ってくるという仕組みなのです。

(下に続く)

年末調整できない控除

年末調整は給与所得者にとって、手間が省けるありがたい制度ですが、なんでもかんでも年末調整で所得税が還ってくる訳ではありません。

次の控除を受ける時は、自分で確定申告をしないと税金が戻ってきませんので注意しましょう。

  • 医療費控除(医療費を年10万円以上払った)
  • セルフメディケーション税制(特定医薬品を年1万2千円購入した)
  • 住宅ローン控除の1年目(2年目からは年末調整OK)
  • 寄付金控除(ふるさと納税など)

年末調整で税金が不足になる人はどんな人?

毎月の給与で「不足しないように」所得税を天引きしているので、年末調整では、税金が戻ってくる人がほとんどです。

ただし、次に該当する人は、逆に税金が不足してしまうので、年末調整で追加に徴収されてしまうことがあります。

  • 年の途中で子供が就職した(扶養家族が減る)
  • 配偶者の年収が103万円を超えてしまった(配偶者控除が受けられない)
  • 離婚などで配偶者がいなくなった(配偶者控除が受けられない)

毎月の源泉徴収では、扶養家族がある前提で所得税を引かれていたが、年末調整の時点で扶養家族が減ってしまったため、扶養控除や配偶者控除受けられなくなった分、所得税が増えてしまうからです。

(下に続く)

まとめ

いかがでしたでしょうか。

年末調整は、毎月暫定的に天引きされる所得税を確定させる制度です。
12月に税金が戻ってきてラッキーと思っていた人も、仕組みがイメージできなのではないでしょうか。

ただし、誰でも年末調整を受けられるものではなく、

  • 転職後に退職前の源泉徴収票が間に合わない
  • 年収2000万円以上

上記の場合、自分で確定申告をしないと所得税が還付されませんのでご注意ください。

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