求人票の応募条件に、昔は35歳以下という表示が多かったが最近は見なくなりましたね。

年齢不問と書いてあるが、裏では制限がある

なかなか転職先が決まらないと、このように疑ってしまいたくなりますが、法律では雇用の機会均等のために年齢による差別が禁止して、能力による採用を要請しています。

今回は、転職の年齢制限が禁止される理由と例外について解説します。

年齢制限が禁止の理由は?

年齢制限が禁止の理由

以前は、求人票をみると30歳以下、35歳以下などの募集条件が記載されていることが多かったですが、最近では年齢による制限がなくなりました。

これは平成19年に雇用対策法が改正されて、募集及び採用時の年齢制限禁止が義務化されたためです。

この法律が目指すところは、採用は年齢で一律に制限せずに、人物や能力によって決定することで、働く能力がある人の雇用機会を増やすことです。

年齢でなく能力・適性で採用すること

みなさんの周りにも年齢以上の元気な人がいると思います。

あの人50代に見えるけど、実は65歳だよ

募集に年齢制限があると、「年齢は高いがその業務は問題なくできる人」が一律に不採用になってしまいますので、中身で判断するのはこれからの日本に相応しい考え方です。

「個々人の能力、適性を判断して募集・採用していただくことで、一人ひとりにより均等な働く機会が与えられるようにすることを目的」

雇用対策法施行規則第1条の3第1項

禁止されている年齢差別は?

形式的な年齢不問

求人票は「年齢不問」としているが、採用者を決定する際に「実は年齢制限」をしている。
表面上は不問にしておきながら、「実は35歳以下しか採用しない」こんな抜け道をされたら法律の意味がなくなってしまいます。

企業は年齢でなく応募者の能力で判断しなければなりません。

年齢による雇用形態の差別

「39歳までは正社員、40歳以上は契約社員」

年齢によって、正規・非正規採用などの差別があったら、雇用の機会均等が奪われてしまいますので、このような年齢による雇用形態の差別も法律違反となります。

年齢で一律に差別することはできません。

パートやアルバイトでも禁止

「パートタイムの募集だから40歳以下」

これでは年齢制限を禁止している意味が無くなってしまます。
雇用対策法では、雇用形態に関わらず年齢制限を禁止しています。

年齢制限が認められる6つの例外

1.定年を上限とする場合

いくら年齢制限が禁止と言っても、自社の定年よりも高齢の労働者を雇うことはできません。

定年年齢を上限として期間を定めない条件で採用することができる

定年を上限とする募集(例)

60歳以下の人を募集(60歳定年退職ため)

【禁止内容】

  • 定年が60歳で、60歳以下を有期契約で募集(契約期間6か月など)
  • 定年が60歳で、58歳以下を募集

2.法律で年齢制限がされている場合

法律でその職業を行うことができる年齢が制限されている場合があります。
例えば、警備員は警備業法で18歳未満の労働が禁止されていますので、募集でも18歳以上とすることができます。

法律で年齢制限がされている場合の募集(例)
  • 18歳以上を募集(労働基準法第62条による危険有害業務のため)
  • 18歳以上を募集(警備業法第14条による警備業務のため)

    3.長期勤続によるキャリア形成を図る場合

    日本の雇用では、新卒者を社内で教育して「定年」まで勤めるという終身雇用の慣行がありますが、この道筋に乗れなかった若者を想定した例外です。

    キャリア育成が認められるためには、次の条件を満たしていることが必要です。

    • 職務経験について不問とする
    • 入社後は新卒者と同等の教育・訓練などを行うこと
    • 上限年齢は、概ね35~45歳を目安とする
    長期勤続によるキャリア形成を図るための募集(例)

    35歳以下を募集(未経験者、長期勤続によるキャリア形成を図るため)

    【禁止内容】

    • 有期契約で募集
      例:35歳以下(契約期間1年、更新あり)
    • 職業経験を条件にしている
      例:35歳以下(〇〇業務経験者)
    • 下限年齢を設けること
      例:20歳以上35歳以下

    4.特定の職種で従業員が少ない年齢層を補充する場合

    技術やノウハウが必要な技術などで、特定の年齢層の技術者が少ないことがあると思います。
    採用当時の景気や退職者などで、30代のエンジニアが他の年齢層に比べて極端に少ない場合、その少ない年齢層を限定して採用することができます。

    具体的な条件は次の通りです。

    • 技術・ノウハウの継承が必要な具体的な職種
    • 30~49歳までの5~10歳の年齢層で、前後の年齢層と比較して1/2以下の場合(以下の図を参照ください)

    特定の年齢層で技術者が少ない例

    上記の図では、36~40歳が前後の年齢層の1/2以下しかいなく、技術の継承のためにこの年齢層に絞って募集することができます。

    特定の年齢層に限定して募集(例)

    ○○技術者として、36~40歳を募集
    (○○技術者は、31~35歳が5人、36~40歳が2人、41~45歳が4人で36~40歳が極端に少ないため)

    5. 芸術・芸能のモデルや役者の場合

    芸術、演劇などのモデルや役者を募集する場合は、その役に適した年齢層で募集する場合、年齢制限の例外となります。

    芸術・芸能のモデルや役者の募集(例)

    舞台の子役の募集(16歳以下)

    6. 60歳以上の高齢者や国の助成を活用した場合

    60歳以上の高齢者や国の助成制度を活用した募集する場合は、年齢制限をすることができます。

    60歳以上の高齢者や国の助成を活用した場合の募集(例)
    • 60歳以上を募集
    • 60~65歳以上を募集(特定求職者雇用開発助成金制度のため)
    (下に続く)

    適切な人材を集めるための工夫は?

    年齢制限の禁止と例外が分かったとしても、欲しい人材はなかなか集まるものではありません。

    自社が求めている人物像とミスマッチの人が応募して来たら、選考や面接対応の手間がかかってしまいますので、募集にも工夫が必要です。

    求人票に業務内容や欲しい人物像を明記

    次の2つの募集要項を比べてみてください。

    業務内容が具体的でない募集要項

    【長距離トラック運転手募集】

    大型車で金属部品の定期配送
    具体的には大阪の工場から東京の物流センターまで金属部品を運びます。
    要大型免許、要フォークリフト免許

    業務内容がイメージできる募集要項

    長距離トラック運転手募集

    大型車(10t)で大阪の金属部品工場から東京の物流センターまで定期運送します。
    具体的には、金属部品(20~30k)の積み込み積み下ろしと長時間運転のため体力が必要で、配送は昼間と夜間の運転が交互にあります。

    なお、お客様の大切な荷物を運ぶ仕事なので責任感と安全運転でお願いします。
    要大型免許、要フォークリフト免許

    この2つの求人票を見比べることで、下の例の方が仕事内容がイメージできるのではないでしょうか。

    具体的に仕事内容と人物像を募集要項に書くことで、「体力が必要」「夜間の運転がある」「責任感のある人」を求めていることを伝えることができます。

    詳細に書くと企業機密が漏れてしまうと心配するなら、差し支えない範囲で記載することが望ましいです。

    面接で詳細を説明するから求人票には詳しく書かない

    一見合理的に見えますが、ミスマッチの人が応募してきて対応する手間がかかりますので、トータルすると人事の仕事量が増えるだけです。

    (下に続く)

    年齢制限を超えた求人に応募したい場合の対応

    基本的には年齢制限が禁止ですが、6つの例外の求人の応募したくなることもあると思います。

    この場合でも応募を受け付けてくれる場合もありますので、その会社で働きたい時の対応は次の通りです。

    企業に問い合わせをする

    電話で問い合わせることになりますが、採用担当者から「なぜ入社を希望しますか?」などの質問がされることが予想されますので、

    • 制限を超えても応募したい理由
    • 簡単な自分の経歴

    これらの想定される質問への回答を準備してから問い合わせをするようにしましょう。

    もし、何も準備せずに電話してしまい、聞かれた時に答えられなかったら「とりあえず電話してきた」と志望度が低い人と思われて却下されてしまいますので注意しましょう。

    応募書類にも一工夫を

    年齢制限を超えて応募した場合、面接で聞かれることは想像できます。

    「なぜ制限を超えても応募してきたのか?」

    「制限を覆すだけの経歴や即戦力があるかどうか?」

    聞かれる事が分かっていれば、その内容を履歴書や職務経歴書に強調してアピールすればよいので、採用担当者から「ぜひ採用したい」と思われるような志望動機・実績を書くように心掛けます。

    特に、実績は具体的にエピソードを織り交ぜてアピールすることで、採用担当者の心に響きますので熱い思いを伝えてみてください。

    (下に続く)

    まとめ

    いかがでしたでしょうか。

    求人では基本的に年齢制限が禁止されていて、この禁止は形式的に求人票を年齢不問にしておけばよいということではなく、選考・採用過程でも実質的に年齢を判断基準としてはいけないことを意味しています。

    • アルバイトでも年齢制限禁止
    • 年齢による雇用形態の差別禁止
    • 例外が認められるのは6つの例外事由のみ

    もし、差別的な求人を見かけたらハローワークに相談することが撲滅のために重要です。

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