(2020-7-23更新)
今月は残業を頑張ったから残業手当が多くもらえると思ったら、給料日に明細をみてガッカリ・・・。
上司に聞いたら「うちはみなし残業だから」と、別途残業代が出ないと言われたが、どんなに残業しても「みなし分」しか貰えないのはおかしいのではないか・・・?
「月給25万円(月40時間分の残業手当を含む)」
求人票で上記のような記載を見たことあると思いますが、パッと見て良さそうですが、実は問題のある制度なのです。
今回は、みなし残業制度のメリットとデメリット、さらに問題点を解説します。
みなし残業とは
求人票でよくみかける「みなし残業」とはどんな制度なのでしょうか?
実は、「みなし残業」という言葉は通称であり、正しくは、次の2つの制度のことを言います。
- 「みなし労働時間制」
- 「固定残業制(定額残業制)」
通常、求人票でみかけるのは、後者の「固定残業制」のことを指すことが多いですが、まずは両者の違いを説明します。
みなし労働時間制
「みなし労働時間制」も大きく分けて2種類あり、事業場外労働と裁量労働制に分かれています。
事業場外労働は、外回りの営業職のように、1日中会社外で勤務する場合に、労働時間把握が難しい場合、あらかじめ定めておいた時間の労働したものとみなす制度です。
裁量労働制は、研究者、エンジニア、デザイナーや税理士、弁護士などの高度の専門性をもつ職について、労使協定で定めた時間の労働したものとみなす制度です。
固定残業制(定額残業制)
固定残業制は、給与にあらかじめ一定時間分の残業手当が含まれている制度をいます。
実は、私たちが普段「みなし残業」と言っているのは、この「固定残業制」のことだったのです。
求人票には次のように書かれているので、気になっていた人も多いと思います。
「月給25万円(月40時間分の残業手当を含む)」
この例では、1か月の時間外労働が40時間に満たなくても、40時間分のみなし残業手当を支払わなければならず、逆に、40時間を超えた場合は、超えた分の残業手当を別途払う義務があります。
固定残業制度は善か悪か?
労働者から見て、固定残業制のメリットとデメリットは、具体的にどんなものでしょうか?
メリット
労働者側のメリットはおそらくこれしかないでしょう。
「実際の残業時間が、固定残業時間より短くても全額もらえる」
「月給25万円(月40時間分の残業手当を含む)」の場合を例にとると、
- 1月の残業0時間(月給25万円)
- 2月の残業80時間(月給25万円+40時間分の時間外手当)
1月は残業がありませんでしたが、固定残業手当が支払われ、2月は40時間を超過した分の時間外手当が別途支払われます。
デメリット
これに対して、デメリットは次の通りです。
基本給が低く抑えられる可能性がある
企業は、なぜこの制度を導入するかを考えてみればわかります。
それは「人件費を抑えたい」からです。
「時間外手当の計算をしなくて済む」なんてことを耳にしますが、給与計算ソフトが自動で計算してくれますし、導入してなくてもエクセルで十分計算できるので、言い訳に過ぎません。
また、こんな求人は最低賃金ぎりぎりか、下回っている可能性があります。(東京都の場合)
「月給20万円(月30時間分の残業手当を含む)」
基本給を低くするために、固定残業代で含めた金額を求人票に載せている訳です。
つまり、手当込みで表示することで、基本給が低いことが隠すことができるだけでなく、残業手当分が上乗せされているので、給与が多いと勘違いさせることができるからです。
見せかけの給与が高く見える
求人情報の給与を高く見せることができます。
- 月給20万円 ※残業手当別途支給
- 月給25万円 ※月40時間分の残業手当を含む
上記1と2の求人はどちらに応募したくなりますか?
2のほうが、給与が高く見えますが、実際は、月給の内訳にもよりますが、ほぼ同額か1の方が高くなります。
例えば、1のパターンが月給=基本給だった場合、月に40時間残業をしたら2のパターンより月給が多くなります。
20万円÷160時間(月間平均労働時間)×1.25(残業割増)×40時間(残業時間)=62,500円
【関連記事】
やたら諸手当が多い給与体系に注意!基本給が低いのは問題だらけ
みなし残業制度の盲点
正社員の給与は、おおむね次のような構成になっております。
- 基本給
- 各種手当(通勤、家族、住宅手当など)
- 時間外労働手当(残業、深夜、休出手当)
特に、時間外労働手当の計算基準となっているものが基本給です。
例えば、残業手当は「1時間当たりの基本給×1.25」のように計算されますし、賞与や退職手当の計算も基本給が基準となっていることが多いです。
言い換えれば、「基本給」を上げることが、給与総額を増やすことにつながる訳です。
余談ですが、会社から「今年は5,000円昇給します」と言われた場合も、基本給が5,000円昇給なのと、みなし残業手当込みの月給が5,000円昇給では全く異なります。
- 基本給が5,000円昇給して、月に40時間残業した場合
基本給(5,000)+時間外手当(5,000円÷160時間×1.25×40時間=1,562円)=6,562円
- これに対して、みなし残業手当込みの月収が5,000円昇給した場合
そのまま、5,000円のみです。(逆算すると、基本給は3,500円程度の昇給です。)
時間外手当の仕組みの詳細は、以下関連記事に解説しています。
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問題事例
休日手当や深夜手当が支払われない
「月給25万円(月40時間分の残業手当を含む)」の場合を例にとると、
「月40時間までの残業であれば、それが休日勤務や深夜勤務であっても手当が払われない」
本来は、「月40時間までの時間外手当」が含まれるだけであって、「休日手当」や「深夜手当」を別途支払わないといけません。
みなし残業時間を超えた分の残業手当が支払われない
「みなし残業」だからと言って、何時間残業しても超過分の時間外手当が支払われない。
ひどい例だと、「みなし残業」だからと、社員の出勤・退勤時刻の管理をしなくてもいいと考えている経営者がいますが、残業手当とは関係なく、従業員の勤務時間を管理しないことは、労務管理上問題ある企業と言えます。
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月策定)
厚生労働省では、みなし・固定残業制の労働者にも、「始業・終業時刻の確認及び記録」を取るように企業に対して指導がされています。
出典:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
働き方改革で、労働安全衛生法を改正して労働時間を把握の義務化予定(平成31年4月実施)
平成30年6月29日に、安倍総理の目玉政策である働き方改革関連法案が成立しました。
この中で、長時間労働の是正として、労働安全衛生法を改正して、「従業員の労働時間の状況を把握しなければならない。」と事業者の義務として明記されましたので、今後はみなし残業だろうが労働時間を把握しなければなりません。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
ここまでご覧いただければ、みなし残業手当の制度は、労働者のメリットが少なく、会社側のメリットが多いことが分かったと思います。
現在転職活動中の人は、求人票をみて「みなし残業制度」だったら、応募を避けることが賢明です。
管理人が転職するなら、労働時間を正確に管理し、時間外手当を正確に払う企業に入社したいと考えています。
固定残業代に満たなかった場合に、働いてない分を受け取るのも気持ち悪いし、超過分を誤魔化されるのも嫌なので、お金に関しては、キッチリとしている会社が望ましいです。
【関連記事】
基本給に20時間の時間外手当含むと書いてあったら、毎月20時間は残業があると覚悟すべきですか?
コメントありがとうございます。
みなし残業(基本給に月20時間分の残業が含まれているなど)がある会社は、その時間分の残業はあると覚悟すべきです。
実際には、少なめの10時間程度の残業ということも考えられますが、それでもみなし残業の制度は良いものではありません。
みなし残業で固定残業が含まれていたら、それだけ残業しろという圧力と思えてしまう。
経営者によっては、「みなし残業分は残業して」という人がいるようです。
この制度は問題が多いので改善すべきでしょうね。
企業の事情があるのは分かりますが、何十時間もの残業代が基本給に含まれていると、社員が可哀想です。
閑散期でも、「残業代払ってるんだから残業して」と言われる会社もありそうです。
今時、勤怠管理はネット経由でもでき計算も瞬時にできる訳ですから、働い分だけ払うことにしてもらいたいものです。
毎月の給料に40時間もの残業代が含まれている会社は、40時間以上の残業があるかブラック企業ですね。
毎月の給与に40時間もの時間外手当が含まれている会社は、40時間は残業があると考えるのが自然です。
みなし残業が40時間含まれていて実際の残業が10~20時間なんてことはあり得ないでしょう。
月20時間の残業代が含まれています、何て言われたら、騙されたみたいで損した気分です。
そうですね。
実際に残業を頑張った時に、給与明細を見たら「少ない」と思ってしまいますね。
みなし残業制はやっぱり怪しいと思えちゃう。
そもそも30~40時間の残業代が含まれてると、ブラックかと考えてしまう。
管理人もみなし(固定)残業制は好みません。
働いた分をしっかりと計算して払ってもらう方がスッキリしますからね。
私もみなし残業は嫌な制度と思ってます。
お返事ありがとうございました。
もともとみなし残業時間が40時間も含まれている求人票を目にすることがあります。
40時間というと、毎日2時間近く残業させることを想定していることになりますが、要注意と考えておいたほうがいいでしょうか?
みなし残業が30~40時間もあるのは、最低それ以上の残業があると解釈できます。
1日8時間が定時間としたら、毎日10時間は覚悟しなければならないことを意味しますね。
読むと悪い面ばかりです。
そもそもみなし残業は、無くすことはできないのでしょうか?
難しい問題ですね。
本来は、外回りの営業職などで労働時間が正確にできない場合や、研究・開発などで忙しい時期と閑散期がある場合に、労働者の裁量に任せた方がいいというための制度ですが、通常の労働者に対しても行われています。
ただし、みなし残業の部分が適切に算出されており、超えた分の残業代が払われていれば違法ではないとされています。
これから転職する場合は、そういう企業を避けるのが精神的にも楽と考えております。