(2023-5-7更新)

ハローワークでもらう失業保険には「自己都合」と「会社都合」2種類あり、会社都合の方が優遇されることはご存じな人が多いと思います。

ただし、会社都合退職で手厚い給付金をもらうには、倒産や解雇の場合だけだと思っていませんか?

実は、長時間の時間外労働やセクハラ・パワハラなどで退職に追い込まれた人たちも「会社都合」として、失業保険を手厚くもらうことができるのです。

また、失業保険は誰でも受け取ることができるものはないので、退職前に確認しておくことが肝心です。

今回は、失業給付の受給要件や会社都合退職で給付を貰う方法を解説します。

失業保険の受給要件は?

失業給付は、失業したら誰でも受給できるわけではありません。

以下の2つの要件を両方とも満たす必要があります。

1.すぐにでも働くことができること

転職活動を行う場合は、この条件は問題なくクリアできます。

「すぐにでも働くことができない」とは、具体的に次のような場合を指します。

  • 病気やけがのため、すぐには就職できない
  • 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できない
  • 定年などで退職して、しばらく休養しようと思っている
  • 結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができない

※出典:厚生労働省職業安定局「ハローワークインターネットサービス」

なお、失業期間中に技能や資格を身に付けるために、スクールに通ったり、教習所に通ったりする事もあると思いますが、転職活動と並行してスクールなどに通っても、問題なく失業給付は受けられます。

2.離職の日以前2年間に、12か月以上雇用保険に加入していたこと

退職日からさかのぼって、2年間に通算12か月以上加入が条件になります。

この期間は通算なので、下図のように途中に間が空いても大丈夫です。

【2年間に通算12か月以上加入となる例】
雇用保険通算12か月の例

また、会社都合による退職の場合は、退職日からさかのぼって、1年間に通算6か月以上加入で対象となります。

ただし、1か月間の勤務日数が11日以上ないと、1か月分のカウントがされませんので、過去に短時間勤務をしたり、休職期間があったりした場合は、一度ハローワークに相談してください。

なお、ハローワークでの手続き方法は、以下関連記事にまとめていますのでご覧ください。

【関連記事】

ハローワークでできること?失業給付の申請方法と職業訓練制度のフル活用を!

(下に続く)

特定受給資格者と特定理由離職者

特定受給資格者

特定受給資格者とは、いわゆる「会社都合退職(特定受給資格者)」のことで、次のいずれかに該当する場合です。

【 特定受給資格者(主なものを抜粋・要約しています) 】

(1)倒産などによる離職

  • 倒産
  • 事業の廃止
  • 事業所の移転で通勤が困難になった

(2)解雇や、やむを得ない事情による離職

  • 解雇
  • 労働条件が事実と異なったため
  • 賃金未払い(1/3以上の金額の未払い)
  • 長時間労働(月45時間x3か月、月80時間x2か月、月100時間x1か月の時間外労働)
  • セクハラ、パワハラ
  • 退職勧奨(恒常的に設けられている早期退職優遇制度は該当しない)

【 注意 】
雇用保険受給資格者証の離職理由コードが、「11・12・21・22・31・32」の場合が対象ですが、これ以外のコードの場合は、ハローワーク職員に相談してください。

特定受給資格者の最終判定はハローワークで行います。

特定理由離職者

特定受給資格者にはならないが、次のようなやむを得ない理由で退職した場合に特定理由離職者となります。(主なものを抜粋・要約しています)

  • 障害、疾病、負傷などによる離職
  • 父若しくは母を扶養のため離職を余儀なくされた場合
  • 結婚・育児、事業所の移転、転勤命令などにより、通勤困難となったことによる離職

【 注意 】
雇用保険受給資格者証の離職理由コードが、「23・33・34」の場合が対象ですが、これ以外のコードの場合は、ハローワーク職員に相談してください。

特定理由離職者の最終判定はハローワークで行います。

(下に続く)

離職理由による差異

特定受給資格者、特定理由離職者とそれ以外の受給者(自己都合退職)とでは、次のような違いがあります。

給付制限期間

特定受給資格者、特定理由離職者には給付制限期間が無いが、自己都合退職の場合は、2か月間の給付制限期間(※1)があるのが大きな違いです。

令和2年10月1日以降に離職した場合は、給付制限期間が3か月から2か月に短縮されました。ただし、2か月に短縮されるのは5年間に2回までです。

 

申請から給付までの流れは次の通りです。

失業給付受給フローチャート

 

給付日数

給付日数も次のように大きく異なり、45~60歳では2倍以上の差があります。

失業給付日数
※出典:厚生労働省職業安定局「ハローワークインターネットサービス」

国民健康保険料が軽減される

会社都合で退職(離職)し、国民健康保険に加入した場合は、保険料の「所得割」が70%軽減される制度があります。

  • 軽減額:前年度の「給与所得」を本来の30%として計算される
  • 軽減期間:離職日の翌日が属する年度の翌年度末

【関連記事】

国民健康保険料軽減制度とは?会社都合なら活用を

特定受給資格者となる可能性はある

会社は、なるべく自己都合扱いで退職させたがる傾向があります。

会社都合で退職させてしまうと、国から助成金がもらえなくなったり、退職した社員から不当解雇で訴えられたりするリスクがあるため、様々な理由を付けて自己都合退職として、離職票を発行しようとします。

もちろん、理不尽な自己都合退職とされないように特定受給資格者の要件が存在し、これに該当すると、ハローワークで特定受給資格者(会社都合)に修正してもらうことが可能です。

【 自己都合でも特定受給資格者になれる場合(例) 】

  • 長時間労働(月45時間×3か月、月80時間×2か月、月100時間×1か月の時間外労働)
  • セクハラ、パワハラ
  • 退職奨励

この場合ハローワークで相談することで、特定受給資格者と認定される場合がありますので、タイムカードなどの出退勤時間を記録したものをコピーしておくなど、具体的な状況証拠を集めておくことがカギとなります。

【関連記事】

雇用保険の仕組みと加入条件を分かりやすく解説

(下に続く)

まとめ

いかがでしたでしょうか。

退職理由によって、失業給付や国保の保険料などで、扱いが異なることがお分かりいただけたと思います。

もし、会社都合で退職してしまったら、これらの制度を上手に活用して転職活動を進めたいですね。

また、自己都合で退職した場合でも、長時間残業などの事実が認定されれば、会社都合に変更してもらえることがあるので、該当するなら「出勤記録」などの証拠を集めてから退職するのが賢明です。

なお、失業保険をもらい終わる前に転職先が見つかった場合は、「再就職手当」をもらえる可能性があるので、以下の関連記事を併せてご覧ください。

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