「今月はたくさん残業したから、残業手当が多いぞ。」と期待して給与明細を見ると、「あれ!?」と首をかしげてしまうほど少なかったら、怒りが込み上げてきたり、やる気がなくなったりしてしまうものです。

「1時間当たりの時間外手当が1,250円とは・・娘のバイト代と変わらないじゃないか!」

何故こんなことになってしまったのでしょうか?

各種手当が残業手当を下げている

先ほどの例では、こんな給与明細かもしれません。

基本給 家族手当 通勤手当 住宅手当 子女教育手当 時間外手当
160,000 30,000 20,000 20,000 20,000 50,000

1日8時間で月20日働き、残業を40時間行った場合(1.25は割増賃金率)
160,000÷8時間÷20日)×1.25×40時間=50,000円

残業手当の計算式を見ると、家族、通勤、住宅、子女教育手当と4種類の手当が合計9万円も支給されているにも拘らず、基本給のみが残業手当の計算基準となっていることが、お分かりいただけます。

こんなことが許されるのでしょうか?

このからくりを説明します。

残業手当の計算から除外できる手当

法律で除外が認められている手当

本来でしたら、手当込みの給与総額を基準に残業手当を計算するのが理想です。

しかし、本人の能力に関係なく支給される手当(家族手当、住宅手当など)を基準に計算すると、独身で実家住まいの人が不利になってしまいます。

そこで、法律では残業手当などの割増賃金から除外可能な手当として、次の「7つの例外」を設けている訳です。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金
  7. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

※出典:労働基準法施行規則21条

名前だけの手当はダメ

上記の7つの例外を悪用すると、基本給をぎりぎりまで低く抑えて、家族手当などの各種手当を盛って給与総額を高くするとことができてしまいます。

悪い例として、住宅手当として、「実家住まいは2万円」、「自己名義の住まいは3万円」などとしてしまうことです。(本来の姿は、実家住まい0円、自己名義の住まいは1万円にして、基本給を2万円増額すること。)

この場合、本来は、かさ上げされた2万円は基本給に含ませ、残業手当の計算対象にしなければなりません。

もちろん、法律もこんな抜け穴を認めずに、かさ上げされている2万円は残業手当の計算対象にするよう求めています。

手当が多い求人は注意

もし基本給を意図的に下げるために各種手当を増やしているのであれば、労働者を不利にしてしまいます。

基本給から算出される手当

一般的に次の手当は、基本給を基準として算出されています。(基本給には、役職、資格手当など含む。除外できるのは上記の7種類のみ)

  • 時間外手当(残業、休日、深夜手当)
  • 賞与
  • 退職金

つまり、基本給が低く抑えられると、残業手当だけでなく、賞与や退職金なども少なく算出される可能性があります。

例えば、「賞与2か月分支給」であれば、それは基本給の2か月分をいいます。

そして、定年まで勤めあげてもらった退職金も、「基本給の〇ヵ月分」で計算されたら、想定よりも少ない金額で泣く羽目になります。

基本給を意図的に低く抑えられると、労働者にとって良いことは何一つありません。

求人票は必要以上の手当がないか確認

就職・転職活動で求人票を見るときは、各種手当が多すぎないかチェックしてみてください。

月給〇〇万円 ※各種手当込み

こんな求人票をみかけたら、面接時または、面接時に聞きにくい場合は、内定後の条件面談(オファー面談)*で、各種手当の中身を確認することが重要です。

入社して、給与明細を見てから後悔しても、どうすることもできなくなるのですから。

*条件面談(オファー面談)とは
内定後に行う、条件確認や条件交渉をする面談のことをいいます。