(2020-7-13更新)

今月はたくさん残業したから、残業手当が多いぞ

給料日に実際に給与明細を見てみると、「あれ!?」と首をかしげてしまうほど少なかったら、怒りが込み上げてきたり、やる気がなくなったりしてしまうものです。

1時間当たりの時間外手当が1,250円とは・・娘のバイト代と変わらないじゃないか!

この会社では、基本給が最低賃金とされている可能性があります。

何故こんなことになってしまったのでしょうか?

今回は、基本給と諸手当の仕組みと、基本給が低いとどんな問題があるか解説します。

各種手当が残業手当を下げている

先ほどの例では、こんな給与明細かもしれません。

基本給 家族手当 通勤手当 住宅手当 子女教育手当 時間外手当
160,000 30,000 20,000 20,000 20,000 50,000

1日8時間で月20日働き、残業を40時間行った場合(1.25は時間外割増賃金率)
160,000÷8時間÷20日)×1.25×40時間=50,000円

残業手当の計算式を見ると、家族、通勤、住宅、子女教育手当と4種類の諸手当が合計9万円も支給されているにも拘らず、基本給のみが残業手当の計算基準となってしまっています。

基本給のみの残業手当単価:1,250円
全ての手当込みの残業手当単価:1,953円

全ての手当(この例だと9万円)が残業手当を計算する単価に含まれていたら、1時間あたり700円も残業手当が増えるのに、意図的に下げられているとしか思えません。

はたして、こんなことが許されるのでしょうか?
このからくりを説明します。

残業手当の計算から除外できる手当

残業手当の計算対象の手当

法律で除外が認められている手当

本来でしたら、手当込みの給与総額を基準に残業手当を計算するのが理想です。

ただし、本人の能力に関係なく支給される手当(家族手当、通勤手当、住宅手当など)を含めて、残業手当の単価を計算すると、会社の近くに住んでいる独身、実家住まいの人たちが不利になってしまいます。

そこで、法律では残業手当などの割増賃金から除外可能な手当として、次の「7つの例外」を設けている訳です。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金
  7. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

出典:「労働基準法施行規則21条」

(下に続く)

名前だけの手当はダメ

上記の7つの例外を悪用すると、基本給をぎりぎりまで低く抑えて、残業手当の計算対象外の家族手当などの各種手当を増やすことで、「給与総額は高いが、残業手当を意図的に下げる」こんなことは許されません。

悪用例として、基本給の一部を住宅手当にしてしまうことです。

  • 「実家住まいは3万円」
  • 「自己名義の住まいは5万円」

住宅手当とは、住宅ローンや家賃(賃料)の補助として支払われるものなので、そもそも実家住まいに支給するものではありません。

正しい姿は、「実家住まい0円」「自己名義の住まいは2万円」にして、基本給を3万円増額することで、かさ上げされた3万円は基本給に加えて、残業手当の計算対象にしなければなりません。

【 手当の悪用(例) 】

悪用例:基本給18万円、住宅手当(実家)3万円or住宅手当(持家)5万円

正:基本給21万円、住宅手当(実家)支給無しor住宅手当(持家)2万円

もちろん、法律もこんな抜け穴を認めずに、かさ上げされている3万円は残業手当の計算対象にするよう求めています。

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手当が多い求人は注意

手当が多い給与

もし基本給を意図的に下げるために各種手当を増やしているのであれば、労働者を不利にするだけなので、そのような求人には応募するべきではありません。

基本給から算出される手当

一般的に次の手当は、基本給を基準として算出されています。(基本給には、役職、資格手当など含む。除外できるのは上記の7種類のみ)

  • 時間外手当(残業、休日、深夜手当)
  • 賞与
  • 退職金

つまり、基本給が低く抑えられると、残業手当だけでなく、賞与や退職金なども少なく算出される可能性があります。

例えば、「賞与2か月分支給」であれば、それは基本給の2か月分をいいます。

そして、定年まで勤めあげてもらった退職金も、「基本給の〇ヵ月分」で計算されたら、想定よりも少ない金額で泣く羽目になります。

基本給を意図的に低く抑えられると、労働者にとって良いことは何一つありません。

(下に続く)

求人票には必要以上の手当がないか確認

就職・転職活動で求人票を見るときは、各種手当が多すぎないかチェックします。

月給〇〇万円 ※各種手当込み

こんな求人票をみかけたら、応募をしない方がいいですが、応募した場合は、内定後の条件面談(※1)で、各種手当の中身を確認することが重要です。

入社して、給与明細を見てから後悔しても、どうすることもできなくなるのですから。

(※1)条件面談(オファー面談)とは、内定後に行う、労働条件の確認や条件交渉をする面談のことをいいます。

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内定通知書で手当の中身を確認

企業は、内定をしたら労働条件を通知する義務を負い、内定通知書(雇用契約書など)で賃金、休日などを明示します。

この内定通知書の内容をよく確認して、不明点は内定先に問い合わせる必要があります。

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内定しても条件が合わない時は辞退可能

内定したら、必ず入社しなければならないものではありません。

企業が提示した条件に納得できなかったり、説明が曖昧で「怪しい」と感じたら、辞退も選択肢に入れましょう。

納得しないまま入社したら、結局、後で後悔することになりますので、入社前に辞退する方が賢明です。

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(下に続く)

まとめ

いかがでしたでしょうか。

給与にたくさんの手当が支給されると嬉しく思ってしまいますが、意図的に手当ての金額を増やして基本給が下げられることは問題、ということがお分かりいただけたと思います。

特に、手当の金額が多かったり、全社員を対象に支給されていたりする場合、その分を「基本給」に上乗せして支払ってもらわないと、残業手当(休日手当、深夜手当も)の単価が減るだけでなく、賞与や退職金が意図的に下げられる危険があります。

このような会社は、従業員を大切にしているとは思えません。

求人票や内定後面談などで、手当の内訳をしっかり確認して、危険な会社に入社することないように注意しましょう。

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