(2020-8-6更新)
上司から会議室に呼ばれて、「業績が思わしくないから辞めて欲しい」と言われた。
今まで、会社に貢献してきたつもりだったが、どうやら会社からはそういう評価でなく、不要な人物とみられていたようだ。
「退職勧奨をされたら辞めなければならないのか?」
辞めさせたいなら解雇にすればいいのに、なぜ退職勧奨をするのでしょうか。
会社側は、解雇よりは退職勧奨をするほうが体裁が良いからです。
今回は、退職勧奨を受けた場合に行う正しい対処方法と、退職届の書き方について解説します。
退職勧奨(勧告)とは
退職勧奨とは、会社が定年前に従業員に対して退職を勧めることで、応じるか応じないは社員の任意とされているところが解雇とは異なり、「退職勧告」と呼ばれる場合もあります。
退職勧奨は、主に次の場合に行われます。
- 支店や事業所の閉鎖による所属員全員を対象
- 一定年齢以上の社員を対象
- 成績が悪い社員を対象
上記の通り、業績によりやむを得ない場合と、会社が特定の社員を対象に行う場合があるため、様々な問題が潜んでいます。
また、俗に「肩たたき」と呼ばれているので、年配の人はピンとくるのではないでしょうか。
退職勧奨は違法?
「退職勧奨は許されない」
このように考えている人は多いと思いますが、退職勧奨自体は「適切に」行われれば違法とはいえません。
例えば、不採算事業を縮小や撤退をする場合に、退職金を上乗せした条件を提示して退職勧奨をする場合には違法性はないでしょう。
ただし、退職勧奨は密室で行われるため、行き過ぎたり、強要になりやすいことも事実で、何度も繰り返し行われたり、長期間に継続して行われた場合など、本人の自由な意思が妨げられれば違法で、退職強要になるので許されません
また、拒否した場合に「懲戒解雇がありうる」「居場所がない」などと、不利益をちらつかせたり、脅したりした場合も退職強要となります。
- 適法:事業の撤退などで適切に行われる場合
- 違法:退職強要、拒否した時の解雇や不利益をちらつかせる
退職強要は損害賠償請求で対抗する
退職強要に対しては毅然とした対応を行い、損害賠償も辞さない姿勢で対処することが必要です。
退職勧奨が何度か行われるようになったら、ボイスレコーダーで録音するなど証拠を押さえてから、弁護士に相談してください。
弁護士への相談は、30分5,000円程度でできるので、一人で悩まないで相談した方が早く解決します。
正しい対応方法は?
辞めたくない場合
退職勧奨の席では、「やめない」ことをはっきりと伝えます。
その後に、「これ以上退職勧奨を行うと、不法行為として損害賠償の対象になります」と警告をします。
ボイスレコーダーで録音すると共に、退職勧奨が行われた日時と面談時間、会社側の出席者、主なやりとりをメモします。
この退職勧奨のメモは、過去の分も思い出せる範囲で、具体的に作成しておいてください。
違法行為と裁判で認めてもらうためのポイントは次の通りです。
- 面談の頻度
- 1回あたりの面談時間
- 会話の内容
面談の頻度
面談の頻度の目安はありませんが、「3か月間に11回」、「4か月間に13回」(下関商業高校事件:昭和55年7月10日)で違法と認められた事件があります。
1回あたりの面談時間
面談時間は、1時間を超えるような長時間で行われると違法と認められやすくなります。
会話の内容
退職勧奨に応じなかったら、「解雇」や「配置転換」するなど不利益をちらつかせたり、脅したりして退職を迫ることは違法となります。
例えば、「退職届を出さなかったら解雇する」(昭和電線電纜事件:平成16年5月28日)で違法と認められた事例があります。
辞めてもいい場合
退職勧奨を拒否して会社に残ったとしても、会社側の「勧奨を断った人物」とレッテルが貼られている以上、今後の配置転換や昇給、昇進などで不利になることが予想されます。
それならば、良い条件を引き出して退職した方がよいとお考えなら、会社に対して応じた場合の条件を確認しましょう。
この時の会社からの回答は、文書でもらうようにしてください。
退職勧奨をされた以上、会社とは法廷で戦うことも視野に入れて、すべて証拠に残すことが肝心です。
口頭のやりとりは、「言った言わない」の水掛け論で終わってしまいます。
会社都合?自己都合?
失業保険
退職勧奨の場合は、失業保険では特定受給資格者(会社都合)として、待機期間なしで失業保険を受給できます。
「(11) 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者」(出典:ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者の範囲」)
自己都合にされてもハローワークで修正できる
もし会社側が自己都合退職扱いとして離職票を発行しても、ハローワークで会社都合に変更できますので心配は不要です。
ただし、会社都合に変更してもらうには、退職勧奨があったことを証明する必要がありますので、次のものを準備しておきます。
- 退職勧奨同意書
- 退職勧奨が行われた日時、内容をメモしたもの
【関連記事】
ハローワークで失業保険の受給要件は?自己都合と会社都合どう違う?
退職届必要?
退職勧奨では、退職届を提出しますが、文面には注意が必要です。
退職願と退職届の違いは?
退職「願」と「届」は、似ているようで使い方が全く異なります。
- 退職願いは、会社に対して退職を願い出ることで、会社の承諾によって成立します。
- 退職届は、会社に退職を通告することで、会社が受理した時点で成立します。
- 退職願い:会社に「辞めさせてください」と言う時に使う(自己都合退職)
- 退職届:会社から「辞めて欲しい」と言われた時に使う(会社都合退職)
役割が逆なんですね。
退職勧奨の場合は「退職届」を提出します。
仮に、会社から「退職願」を要求されても断ります。
なぜなら、退職願いを出してしまうと、自己都合退職にされたり、退職金が減額されたりする恐れがあるからです。
文面サンプル(ダウンロード)
自己都合では、理由を「一身上の都合により」と書くことが一般的ですが、退職勧奨の場合は「退職勧奨に伴い」と書いてください。
会社から「一身上の都合により」で出してくれと言われても、退職勧奨なのに「一身上の都合により」では、おかしいとはっきり言ってください。
なお、管理人が作成したオリジナル退職届を活用してください。
退職届ダウンロード(Wordファイルがダウンロードされます。)
有給休暇は消化できる
退職勧奨の場合でも残っている有給休暇は消化できます。
例えば、1か月後が退職日なのに、有給休暇が40日残っている場合では、毎日使っても休暇が余ってしまいます。
こんな場合には、条件を交渉する際に
「40日の有給が残っていますが、この扱いはどうなりますか?」
と尋ねれば、余った有給休暇を金額に換算して、退職金を上乗せしてもらえるなどの対応がされると思います。
【関連記事】
意外と知らない有給休暇の仕組み、週1日のアルバイトでも貰えるの?
まとめ
いかがでしたでしょうか。
退職勧奨は、企業の業績悪化や支店・工場閉鎖などの場合に行われるだけでなく、辞めさせたい社員を「ほぼ強制的に」退職させるために行われることもあります。
理不尽な勧告に対しては、しっかりと証拠を残して対処しなければ、泣きを見てしまいます。
なお、不当な退職勧奨をしてくる会社からは、金銭的な補償を受けてさっさと転職することが賢い生き方だと思います。
【関連記事】
やむを得ない退職勧告なら納得できますが、業績も問題ないのに辞めさせたい社員に退職勧告をするような会社は最悪です。
今まで尽くしてきた会社からそんな仕打ちをされたら、怒りを通り越して失望してしまいます。
もはやこれまでと見切りをつけるしかありません。
会社のために頑張っきたのに、退職勧奨されたら失望ものです。
退職金を上乗せしてもらい、さっさと辞めますね。
個人を指名して退職勧奨をされた時のショックは計り知れないです。
一度勧奨の対象になってしまうと、残ったとしても昇給・昇進が望めませんので、上乗せ退職金を貰って辞めることが賢明です。
退職勧奨と希望退職は異なるものですか?
どちらも退職金の上乗せなどの措置があると思いますが。
希望退職は、通常事業所や部署、年齢などの条件で対象者の範囲を定めて「退職者の募集」をして、労働者の自発的な意思で応募して退職することです。
これに対して退職勧奨は、対象者を名指しして「退職の依頼」をするところが異なります。
ただし、希望退職でも人数のノルマがあったりして、退職勧奨との境目が曖昧な場合もあるので、厳密に分けられないこともあります。
いつも拝見しております。
退職勧告は、嫌だといっても最終的には応じることになるのでしょうか。
何度もしつこく勧告されて、しぶしぶ応じたというのを聞いたことがあります。
コメントありがとうございます。
複雑な問題ですが、退職勧告をされたということは「不要な人物」と思われている可能性が高いので、仮に残っても昇給や昇進面で不利な扱いをされる場合があります。
管理人なら、退職金を割り増しで頂いて辞めることを選択します。