(2020-6-25更新)
有給休暇は、正社員や契約社員だけの制度だと諦めていませんか?
また、有給休暇の取得率は48.7%(平成27年:厚生労働省調べ)と、半分以上が未消化のまま切り捨てられているのです。
「会社が使わせてくれない」
「有給使ったら評価が落ちる」
実は、有給休暇が申請されたら、本来はよほどのことがない限り拒否できないのですが、使いにくい雰囲気がある企業も多いのではないでしょうか。
今回は、有給休暇の付与条件や取得方法、企業の禁止事項について解説します。
有給休暇とは
有給休暇(年次有給休暇)とは、心身の疲労を回復しゆとりある生活を実現するために、一定の条件を満たした労働者に与えられる賃金の支払われる休暇のことをいい、法律で定められた権利です。
一定の条件は、次の通り法律で定められています。
- 雇入れの日から起算して6か月間継続勤務
- 全労働日の8割以上出勤
誤解している人もいるかもしれませんが、有給休暇は事業者の好意で与えている制度でなく、法律で義務付けられている制度です。
このため、本来は会社に気兼ねすることなく、自分の使いたい時に堂々と行使すればよいのです。
有給休暇の付与日数
有給休暇の付与日数は、一般の労働者とアルバイトやパートタイム労働者共に、それぞれ法律で決まっています。
(1)一般の労働者の有給休暇付与日数(所定労働日数が1週間5日以上、または30時間以上)
(2)パートタイム労働者の有給休暇付与日数(所定労働日数が1週間4日以下、かつ30時間未満)
また、アルバイトやパートタイム労働者など、1週間の所定労働日数が4日以下(所定労働時間が30時間未満)の労働者にも有給休暇を与えらます。
つまり、週に1~2日の勤務であっても、有給休暇を取得することができるのです。
「アルバイトは有給休暇なし」と堂々と言っている経営者がいますが、法律上許されません。
有給休暇の取得
有給休暇の権利を行使することを、法律用語では「取得」と言います。
1.基本的に労働者の好きな時に取得できる
有給休暇は、次の場合を除いて労働者の好きな時に取得できると法律上定められています。
- 事業の正常な運営を妨げる場合
- 計画的付与により与える場合
事業の正常な運営を妨げる場合
時季変更権といい、会社の繁盛期(年末年始などの多忙な時など)に有給休暇を取得されたり、他の労働者も同じ日に申請されたりするなど、業務が回らなく恐れがある場合に、有給休暇の取得を拒否できます。
ただし、忙しいからといって、安易に拒否することは許されません。
そもそも、忙しい時期に1人が休んだくらいで業務が回らなくなること自体、経営者の管理体制に問題があるので、これを理由に有給休暇を使わせないのは、筋が違います。
計画的付与により与える場合
労使協定を結ぶことで、年次有給休暇のうち5日を超える分については、計画的付与と言って、業務の閑散期などに有給休暇取得日を割り振ることができる制度です。
計画的付与の割り振りは、次の3つの方法があります。
- 企業もしくは事業場全体の休業による一斉付与方式
- 班・グループ別の交替制付与方式
- 年次有給休暇付与計画表による個人別付与方式
2.年次有給休暇の時間単位付与(半日休暇など)
労使協定を結ぶことで、年次有給休暇のうち5日の範囲内で、時間を単位として与える制度があり、例えば、半日休暇が時間単位付与に該当します。
就業規則で、半日休暇は「年間5日分(10回)まで」と決まっているのは、この決まりがある為です。
有給休暇の取得に理由はいらない
有給休暇は、心身の疲労を回復しゆとりある生活を実現するための制度なので、申請時に取得の理由は不要であり、記入欄がある場合には「私用の為」で記入すればよいもので、私用の理由は問われません。
有給休暇は労働者の権利なので理由を伝える必要なし
よく、有給休暇は病気やケガなどで使うもので、遊びに使用するものではないと思っている人もいますが、むしろ遊びで使う方が制度の趣旨に合っているのではないでしょうか。
禁止事項
1.取得したことによる不利益な取扱いの禁止
労働基準法附則第136条で、年次有給休暇を取得した労働者に対して、不利益な取扱いを禁止しています。
不利益な取り扱いは、例えば次の内容です。
- 精勤、皆勤手当の不支給
- 賞与、昇進などの査定にあたってマイナスに評価すること
逆に、有給休暇を取得しなかった労働者に対して、例えば、賞与上乗せなどの有利な取り扱いをすることも禁止されています。(結局同じことなので)
2.有給休暇の買取り
有給休暇は、心身の疲労を回復しゆとりある生活を実現するための制度であるので、買取りは制度の趣旨からすると行うものでありません。
また買取ったことで、結果的に規定日数分の有給休暇を与えてないことになる場合は、違法となるからです。
しかし、次の場合に買い取ることは違法とはなりません。
- 法定日数を超えて与えられている場合、超えた部分を買い取ること
- 2年の時効で消滅した有給休暇を買い取ること
- 退職時に消化しきれなかった有給休暇を買い取ること
一番多いのは、会社都合で退職する際に有給休暇を使う余裕がないまま退職日を迎えてしまうので、有給残を買い取ってもらうパターンではないでしょうか。
政府の取り組み
1.第4次男女共同参画基本計画で有給休暇取得率70%を目標
政府は、平成27年に第4次男女共同参画基本計画で、平成32年までに有給休暇の取得率を、平成27年の48.7%(※1)から70%にする目標を掲げて活動を進めています。
(※1)厚生労働省「平成28年就労条件総合調査 結果の概況」
2.労働基準法改正案で5日の有給休暇取得義務化(平成31年4月施行)
労働基準法改正案が、2018年6月29日に参議院本会議で可決して成立しました。
これにより、2019年4月からは、有給休暇が年間10日以上付与される労働者については、その内5日間を計画的付与などにより取得させることが義務化されました。
この5日間は年間の通算で構わないので、
- 3日間の有給休暇を自発的に取得した人:2日間を使わせる
- まだ1日も取得していない:5日間を使わせる
このように、各人の有給休暇の取得状況に応じて付与ができますが、個人単位に割り振ると手間なので、次に説明する計画的付与という方法で行うようになると思われます。
具体的な計画的付与は、次のようなグループ単位で行われることになると思われます。
- 支店・事業所単位
- 職場単位
- 班別(交代制など)
- 個人別
例えば、工場などでは「一斉有給休暇取得日」などを設けることで、混乱なく5日間を消化させることができます。
【 有給休暇義務化のイメージ 】
(出典:厚生労働省「労働基準法等の一部を改正する法律案」について)
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
有給休暇の権利行使について、間違った知識の人もいたと思います。
週1日勤務のパートタイム、アルバイトの人たちにも権利が発生し、使用(取得)にも理由が不要で、基本的に会社は拒否できないのが、法律上の正しい姿です。
有給休暇の権利や取得の正しい知識を身に付けて、心身が豊かになれればと思います。
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コンビニバイトで、有給なんて使わせてもらえません。