(2018-9-18更新)

労働基準監督署が、平成28年度に企業に指導を行った結果、支払われた未払い残業代が、97,978人に対して127億円もありました。

これは労働基準監督署が把握しているものだけですから、実際の未払い残業代は恐ろしい金額であると予想できます。

現在、未払い残業代の請求時効は2年間と定められていますが、2020年実施に向けて、時効期限の延長が審議されています。

では、未払い残業代の今後の動向と請求方法を解説します。



未払い残業代とは

法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働いたにもかかわらず、時間外割増賃金が支払われないことをいいます。

例えば、1日の勤務時間が7時間の場合は、1時間残業しても1時間分の通常賃金が払われるだけで、25%の割増賃金が払われることはありません。

こんな場合でも未払い残業代を請求可能

固定残業制(定額残業制)

固定残業制とは、求人票でよく見かける「月給25万円(月40時間分の残業手当を含む)」で、この場合、月間40時間を超えて残業しても、なんだかんだ理由をつけて払おうとしないことが見受けられますが、40時間を超過した分の残業代は払わなくてはならないものです。

名ばかり管理職

本来の管理職とは、経営者と一体的な立場で相応の権限と待遇を与えられていれば、労働基準法では「管理監督者」として残業代や休日手当を払わなくていいと定められていますが、名ばかり管理職とは、それほど権限も待遇も与えられていないにもかかわらず残業代だけ払われない人たちをいいます。

ファーストフードや居酒屋の店長が、名ばかり管理職としてよく問題になっているのも、店長とは名ばかりで、実態は一般従業員とさほど変わらないからです。

請求の時効は2年間

未払い残業代もいつまでも請求できる訳ではなく、請求期限(時効)があり、本来残業代が払われるはずだった給料日から2年間と決められています。

2年が経過前に内容証明郵便などで請求をすることで、時効を一旦中断させることができます。

未払い残業代を請求するために行うこと

規則や契約書類のコピーを集める

労働条件通知書など

労働条件通知書

入社時に労働条件通知書や雇用契約書などを取り交わしたもので、労働時間や残業手当などの条件が記載されています。

就業規則や賃金規定

就業規則

就業規則には、労働時間、賃金、残業手当などに関する規定があるので、コピーを入手しておきます。

なお、就業規則に直接書かれてなく、賃金規定などの子規定に記載されている場合もあります。

労働時間が分かる資料

次に、実際に労働した時間を証明する資料を集めておきます。

これは、会社にとって都合の悪い部分は破棄されてしまうこともあるので、内密に集めておきましょう。

タイムカード、出退勤時間を記録したもの

タイムカードの代わりに、タイムレコーダーで記録している場合は、勤務実績を画面に表示させて写真を撮るなどしておきます。

その他、パソコンのログアウト時刻や残業時間中に送信したメールのコピーなど、出退時間が分かるものはすべてかき集めておきます。

入退出時間記録

セキュリティがしっかりしている所では、入場・退場の時間が記録されていますので、可能な限り入手します。

業務日報、日記、手帳への退勤時間のメモ書きなど

業務日報や個人的な日記なども、他の資料と合わせることで証拠能力がありますので準備します。
また、今からでも遅くないので日記などを始めることもいいかもしれません。

業務メールの送信時間記録など

勤務中にメールを送信することがあるのであれば、メール送信履歴なども資料になります。
また、帰る直前に業務メールを送信して、送信時刻を残すということも有効です。

(下に続く)



未払い残業代の請求方法

労働基準監督署への申告

会社調査

労働基準監督署への申告(通報のこと)をすると、監督署で調査の必要があると判断されると事業所に申告監督が入ります。
申告監督とは、労働基準監督署が事業所に来て、規則類の調査から始まって、労働者へのヒヤリングなども行い、怪しいと判断されると徹底的に調べ上げられるガサ入れみたいなものです。

ここで未払い残業代が発覚すると、「全従業員について未払いがないかを調査して支払うこと。」などの指導がなされます。

労働基準関係情報メール窓口

近年、労働基準監督署では、情報提供(通報)をしやすくするために、通報専用のメールアドレスが開設されました。

通報専用のメールアドレスの他に、電話のホットラインもあり、困ったときはお気軽に相談できます。
厚生労働省「労働基準関係情報メール窓口

民法改正による未払い残業代の消滅時効がどうなる?

平成29年5月26日に「民法の一部を改正する法律」が国会で可決され成立し、平成32年4月1日施工(法律が実施されること)されます。

現行では、民法174条で未払い賃金を1年の短期消滅時効としているが、労働基準法115条で2年に延長して労働者の保護としていました。(退職金のみ5年)

今回の改正で、174条の短期消滅時効が削除(廃止)され、民法上では一般債権と同様に権利を行使できることを知ったときから5年間となり、これを労働基準法で2年に短縮することは、もはや労働者の保護と言えなくなってきました。

そこで、厚生労働省では「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」で、2018年の夏頃までに未払い賃金の消滅時効について結論を出すことになっています。

仮に未払い賃金の消滅時効が5年となれば、中小企業にとっては大きな影響があると言われていますが、本来払うものを払っていなかったのだから、文句を言うことは筋が違うのではないでしょうか。