(2020-6-23更新)
健康増進法が改正され、今年の4月から「タバコを吸える場所」が減ってしまいましたね。
ひと昔前までは、オフィスで堂々とタバコを吸いながら仕事ができたのに、今では狭い喫煙ルームで細々と吸う人も多いと思います。
「いや喫煙ルームがあるならましな方で、社内に喫煙ルームがなく外に行かないと吸う場所が無い」
そして、2020年の4月の法律施行に向けて、次々と喫煙ルームが撤去されてしまいました。
「喫煙者は益々肩身が狭くなっていく・・・」
今回は、年々厳しくなっていく喫煙対策と健康への害について解説します。
目次
何故タバコを吸う場所が限られるのか?
ありとあらゆる場所での喫煙が、法律や条例で制限されるようになってきたので、外出先でも他人のタバコの煙を吸わされることが、ほぼ無くなったのではないでしょうか?
まずは、喫煙関連の法律・条例を紹介します。
健康増進法(2020年4月施行)
健康増進法の改正により、2020年4月からは、お店や学校、病院、官公庁施設などの多くの人が利用する場所では、原則屋内禁煙となり、違反して喫煙した場合には30万円以下の過料が課されます。
例外は、既に営業している客席面積が100平方メートル以下の飲食店で、「喫煙可能」と表示することで喫煙が可能となりますが、「既に営業している」お店が例外になるので、新規開業した場合は例外となりません。
【 2020年3月までの制度は? 】
お店や学校、病院、官公庁施設などの多くの人が利用する場所では、受動喫煙(他人のたばこの煙を吸わされること)を防止するために、分煙や喫煙ルームなどを設置するように求める、罰則無しの努力規定です。(健康増進法25条)
労働安全衛生法
また、会社の職場についても、労働者の受動喫煙を防止するための措置をすることを求めています。(労働安全衛生法68条の2)
措置の例として、全面禁煙か喫煙室の設置を挙げており、費用や設置場所の関係で全面禁煙をとる企業が多いのも、喫煙者には酷ですが、法律に従った結果だった訳です。
受動喫煙防止条例(神奈川県、兵庫県、東京都)
不特定多数の者が出入りする公共的な場所で、受動喫煙による健康被害を防止する条例で、神奈川県が2009年(実施は2010年)、兵庫県が2012年(実施は2013年)、東京都が2018年(実施は2020年)に制定しています。
特に、東京都の条例は一番厳しいもので、100平方メートル以下の従業員を雇っていない個人経営の飲食店を除き、
- 屋内全面禁煙
- 役所や学校、医療機関などは敷地内も禁煙
さらに、学校には敷地内に喫煙所の設置不可という厳しさです。
企業の喫煙者に対する対応
1.休憩時間以外の喫煙禁止
吸わない人の立場からは、タバコを吸うために席を立つ、いわゆる「喫煙休憩」が不公平と思うし、その上、タバコの臭いは不快に感じるものです。
「1時間に1回はタバコを吸いに行く」
勤務時間中にタバコを時間に換算すると、移動時間5分、喫煙時間5分と仮定して、1回あたり10分の時間の無駄が発生します。
また、タバコを吸っている最中に急ぎの電話が入ると、わざわざ呼びに行く手間がかかり、周りの人たちの時間も無駄にするので、「休憩時間以外の喫煙禁止」にする企業が増えることも納得できます。
他の従業員への悪影響
タバコを吸って帰ってくると、周りの従業員が嫌な思いをします。
「帰ってくるとタバコ臭い」
特に、エレベーターや会議室に喫煙直後の人が入ってくると、タバコの臭いで部屋が充満してしまい、他の従業員の気分が悪くなってしまう事もあります。
残留受動喫煙(サードハンドスモーク:三次喫煙)
世の中ではそれほど認識されていませんが、衣服や髪の毛に付着したタバコの煙は、臭いだけでなく有害な残留物質を含んでいるのです。
さらに、タバコを吸った人の吐く息にも有害物質が含まれているので、非喫煙者がこの有害物質を吸うと残留受動喫煙(サードハンドスモーク)として健康被害がでるとも言われています。
日本全国の公務員の喫煙タイムは920億円分!
市民団体「兵庫県タバコフリー協会」が尼崎市役所と西宮市役所の喫煙所を観察して調査したところ、休憩時間以外に利用した時間を給与(俸給)に換算したところ、合計1億3200万円(尼崎市役所;7700万円、西宮市役所:5700万円)と算出した。
これを全国の公務員の人数で計算すると、さすがに大袈裟ですが、920億円の税金が無駄に消えていると結論付けています。
2.就業時間中の喫煙禁止
休憩時間中は、業務の指示などを受けずに、労働者が自由にとることができる時間とされているので、本来は自由に使うことができます。
「休憩時間の利用について事業場の規律保持上必要な制限を加えることは休憩の目的を害さない限り差し支えないこと。」(労働次官通達:昭和22年9月13日)
ずいぶんと古い通達ですが、規律保持上必要な制限を加へることが可能とされています。
例えば、社内を全面禁煙にしているのに、休憩時間中にわざわざ遠くで喫煙して来て、タバコの残留物質を持って帰って来ては、何のための全面禁煙か分からなくなります。
このような場合は、他の従業員の健康を害する恐れがあり、就業時間中とは言え喫煙を禁止することができます。
また、サービス業や販売など、お客様と接することがある場合は、お客様を不快にさせてしまうので、喫煙を禁止することができます。
3.喫煙者不採用
喫煙者の不採用と言えば、株式会社星野リゾートが有名ですが、法的な問題はないのでしょうか?
実は、労働者に職業選択の自由(憲法22条)があるのと同様に、企業にも経済活動の自由が保障(憲法22条、29条)されていて、採用の自由も認められています。
「企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇用するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができる」(三菱樹脂事件:昭和48年12月12日)
つまり、喫煙者を不採用にすることが、法律や公序良俗(社会の一般的秩序、または一般的道徳観念)に反してない限り、違法とはならないのです。
現在の社員への不利益は問題
これから採用する場合は、喫煙者を不採用にしても法律上問題ないとしても、既に働いている喫煙者社員に対して、「あなたはタバコを吸うから」と喫煙者という理由だけで、不利益な取り扱いは許されません。
タバコの健康被害は?
「タバコは身体に悪い」みんな分かっているが、具体的に何が悪いのかと聞かれると、答えられる人は少ないのではないでしょうか。
1.肺がんなど、多くの癌(がん)の危険性
タバこの煙には、200~300種類もの有害物質と50種類以上の発がん性物質が含まれており、肺がんや喉頭がん、食道がん、子宮頸がんなど、あらゆる癌(がん)の原因となる危険性があります。
- 喫煙者(男性)ががんで亡くなる危険性は、喉頭がんで5.5倍、肺がんで4.8倍
- 脳卒中と心筋梗塞の大きな原因も喫煙
出典:日本医師会「たばこを吸うと寿命が8~10年短くなる?」
2.多くの病気の危険性
癌(がん)以外にも、心筋梗塞、狭心症など循環器の病気や、生活習慣病など、あらゆる病気の原因となる危険性があります。
さらに、妊娠中の喫煙は、早産や死産、乳児死亡など、出産への悪影響があるので、妊娠したらタバコはやめるように医者から言われますね。
まとめ
タバコに対する社会の目は、日に日に厳しくなってきました。
企業も健康増進法や労働安全衛生法により、従業員のタバコによる被害を受けないような労働環境を用意する義務があり、この義務を怠ったことで従業員に健康被害が出た場合は、損害賠償請求を受けることになります。
今後もタバコの害について、世間の目がどんどん厳しくなるので、
「それならは、喫煙者は採用しない」
と考える企業が増える、そんな時代が来るのではないでしょうか。
実際に、株式会社divの真子社長の次のツイッターが話題になりました。
今後、喫煙者は一切採用しないことを決めました。(中略)①健康②生産性③周囲への影響という観点で会社にとって良いことが何もありません。喫煙者不採用の会社が増えることを願っています。
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