(2020-7-17更新)
アベノミクスの目玉政策である「働き方改革」について、名前は聞いたことあるが内容はイマイチ良く分からないという人も多いと思います。
既に、2019年4月からは有給休暇を5日取得義務化などがスタートしますが、この法改正にどう対応していいか悩んでいる会社もあるのではないでしょうか。
2019年4月からは、次の内容が施行されています。
- 罰則付き時間外労働の上限規制の導入
- 有給休暇の5日取得義務化
- 勤務間インターバル制度の普及促進
- フレックスタイム制の清算期間延長
- 高度プロフェッショナル制度の創設
今回は、働き方改革について、内容のおさらいと具体的にどう変わるかを解説します。
働き方改革とは
一億総活躍社会の実現(2015年10月)に向けた取り組みの一環として、労働生産性を改善し、生産性向上の成果を働く人に分配することで、賃金の上昇、需要の拡大を通じた成長を図る「成長と分配の好循環」を目指す改革です。
働き方改革の3本の矢
働き方改革の実現には3本の矢があり、それぞれがかみ合うことで最大限の効果が発揮します。
- 非正規雇用の処遇改善
- 長時間労働の是正
- 柔軟な働き方がしやすい環境整備
非正規雇用の処遇改善
非正規雇用者の処遇が低く抑えられていることの改善として、雇用形態に関わらず「同一労働同一賃金」を実現と、福利厚生や教育訓練の均等待遇の確保などの取り組みです。
長時間労働の是正
長時間労働を是正する取り組みは、時間外労働の上限規制(1ヶ月100時間、2~6か月平均80時間、1年720時間)の導入と、年5日間の有給休暇取得義務化、および、勤務間インターバル制度(前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保)などの取り組みです。
柔軟な働き方がしやすい環境整備
テレワーク(時間や場所の制約を受けない勤務形態)やクラウドソーシング(インターネットを通じた業務委託)など、柔軟な働き方に対する支援と、副業・兼業の推進などの取り組みです。
労働時間に関する制度の見直し
日本では、欧州などに比べて労働時間が長く、この20年間フルタイム労働者の労働時間はほぼ横ばいで、仕事と子育てや介護と両立させるためには、長時間労働の是正が必要になっています。
罰則付き時間外労働の上限規制の導入
時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度にする制度が導入されます。(2019年4月施行、ただし、中小企業は2020年4月施行)
ただし、自動車運転業務、建設事業、医師等について、5年間の猶予期間中は除外し、また、研究開発業務について、医師の面接指導を設けた上で、時間外労働の上限規制は適用しない。
【改正前(2019年3月まで)】
労働基準法第36条で、企業は三六協定(※1)を結ぶことによって時間外労働をさせることができ、この時間外労働にも限度時間基準が定められています。
期間 | 時間外労働時間 |
1ヶ月 | 45時間 |
2ヶ月 | 81時間 |
3ヶ月 | 120時間 |
1年 | 360時間 |
ただし、「特別条項」といって労使の合意により、上記の限度時間基準を超えることも可能で、その上限時間は無制限とすることができます。
【関連記事】
中小企業に対する割増賃金率の猶予措置の廃止
労働基準法では、時間外労働の割増賃金(残業手当)を、月60時間までが25%で、月60時間を超えると50%と規定していますが、中小企業については、月60時間を超えても25%を支払えばよいとされてきました。
今回の働き方改革で中小企業への猶予措置を廃止し、月60時間を超えたら50%の割増賃金の支払いが必要になります。(2023年4月施行)
月60時間超過:25%→50% ※2023年(令和5年)4月以降
有給休暇の5日取得義務化
使用者は、年間10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日間は時季を指定して与える義務が発生するようになります。(2019年4月施行)
5日間の有給休暇の取得方法は、「計画付与(※2)」の形で行われますが、労働者が計画付与の前に自発的に取得した場合は、その分の計画付与の日数が少なります。
(※2)計画付与とは、雇用者が有給休暇を指定した日付に取得させる方法をいい、具体的には、事業所、事務所、グループ、個人ごとに、事前に計画的に休暇取得日を決めることです。現状も、工場などでは、夏季や年末年始などに、「事業所・工場一斉有給休暇取得日」などを行っているところはあります。
有給休暇の制度の詳細は、関連記事を参照ください。
【関連記事】
意外と知らない有給休暇の仕組み、週1日のアルバイトでも貰えるの?
勤務間インターバル制度の普及促進等
企業は、勤務間インターバル制度の導入に努めるとされます。(2019年4月施行)
勤務間インターバル制度とは、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保することで、例えば、インターバル時間が12時間で、9:00~18:00が定時間の人が23時まで残業を行った場合は、翌日の11時までは出社が免除され、9:00~11:00は出社したことになる制度です。
今回は、勤務間インターバル制度の「普及促進」ということですが、今後は、試行錯誤しながら徐々に広がっていくことを期待します。
フレックスタイム制の清算期間延長
フレックスタイム制の「清算期間」の上限が、現行の1か月から、改正後は3か月に延長されます。(2019年4月施行)
これによって、「今月は繁盛期で忙しいから頑張って、来月は勤務時間を減らす」など、月をまたいでの時間調整ができるようになります。
【関連記事】
特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設
職務の範囲が明確で一定の年収(1,075万円以上)を有する労働者が、研究開発、アナリスト、コンサルトなどの高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、本人の同意や委員会の決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする。(2019年4月施行)
つまり、残業・休日出勤手当を払われない労働者のことです。
【関連記事】
みなし残業はどんな制度か?固定残業代は労働者にメリットがない
高プロ導入時の義務
高度プロフェッショナル制度を導入する場合には次の義務が生じます。
- 年間104日の休日を取得させる
および、次の1~4のうちいずれかの措置
- インターバル措置
- 1か月または3か月の在社時間等の上限措置
- 2週間連続の休日確保措置
- 臨時の健康診断
さらに、企業は高度プロフェッショナル制度対象者について、労働時間を把握しなければならなくなります。
高プロ対象業務は?
2018年10月31日に労働政策審議会で、対象業務が提示されました。
- 金融商品の開発
- 金融商品のディーリング
- アナリスト
- コンサルト
- 研究開発
対象業務の詳細と導入状況は関連記事で解説しております。
【関連記事】
今後の課題
1,075万円以上の年収の人は元々残業手当が不支給ですから、今回、高プロ制度を導入しても混乱は起こらないと思われます。
ただし、将来的に年収基準が引き下げられることもあるので、それまでにしっかりと運用して問題点を出しておく必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
働き方改革というと、労働時間にばかり目が行ってしまい、「非正規労働者の処遇」や「(在宅などの)柔軟な働き方」の改善がなかななできていないような印象があります。
それでも、この働き方改革で、少しでも長時間労働が是正され、過労死する人が減ってくれればと願っています。
管理人たなです。
いつもお世話になっております。
働き方改革について、施行1年経過で内容を見直しました。
また、元号だと分かりにくいので、表記を西暦に統一しました。
今後ともよろしくお願いいたします。