(2020-8-17更新)

書類選考から始まって、一次、二次、そして三次面接を突破して「内定」をもらえた時は、満足もひとしおでしょう。

ここまで頑張ったご褒美として、ちょっとした贅沢もしたくなるものですが、まだ大切なことが残っているのです。

それは「労働条件通知書」の中身を良く確認することです。

実際に、求人票の記載や面接で聞いた内容と「実際の労働条件」が異なる可能性があるからです。

今回は、内定時にもらえる労働条件通知書(雇用契約書)の確認方法を解説します。

労働条件通知書(雇用契約書)の確認項目

労働条件通知書

労働条件通知書とは、企業が内定者に対して交付する労働条件が記載された書類のことで、内定通知書と一緒に送られてくることが多いです。

なぜ内定時にこのような書類を交付するかというと、労働基準法で次のように定められているからです。

「労働者を採用する時は、賃金、労働時間などの労働条件を書面などで明示しなければならない」

これは入社前に労働条件を書面で交付することで、「思い違い」で入社してしまうトラブルを防止するために重要なもので、内定通知書や雇用契約書などと名称が異なっていても、法律上の雇用条件が記載されていれば問題ありません。

この通知書を受け取ったら、求人票や面接時に伝えられた内容とよく見比べて、差異がないか確認することが重要です。

もし、求人票や面接時の内容と異なっても、労働条件通知書の記載事項が正式な契約内容となってしまいますので、不明点がある場合は、内定先に問い合わせましょう。

労働条件通知書では、法律で8項目を明示することになっていますので、順番に説明します。

1.契約期間

期間の定めの有無

期間の定めがある雇用契約かどうかが記載されており、「有り」の場合は、契約社員や特定の期間のみの雇用の場合です。

それ以外の雇用形態、正社員のように長期に雇うことが前提の場合、パート、アルバイトなど契約時に特に期間が決まっていない場合は、「無し」と書いてあります。

入社日(契約期間)

よくトラブルになるところは、入社日(契約期間)です。※社員の場合、記載ない場合もあります。

新卒採用や入社日が予め提示してあった場合は、問題になりませんが、欠員補充の場合などですぐ来てほしい時は、企業側の入社希望日が書かれていることがあります。

特に、面接時に入社予定日を聞かれたが具体的な日付を回答していない場合、トラブルになりがちなので注意が必要です。

通常は、最終面接で入社日の取り決めが行われますが、採用担当者が聞き間違えや勘違いをしていることもあり得ますので、よく確認してください。

また、その日までに退職できないなんてことのないように、入社日は確実に入社できる日付にする必要があります。

なお、退職で引き留めに合い、決めた入社日までに入社できなくなってしまうと、内定取消しもあり得ます。

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契約更新の条件や試用期間など

契約社員等で、契約更新の条件がある場合は、契約更新の条件が書かれています。(勤務態度や出勤率など)

また、入社数か月間は、試用期間の場合もありますのでこちらも注意してください。

2.就業の場所

入社時に勤務する場所となります。

転勤の有無も確認しておくポイントです。特に、転勤の可能性が高い場合は、面接時にも聞かされていると思いますが、面接時に転勤の話がなかった場合、連絡して確認しておいた方がいいですが、全国に拠点がある企業で、一般職や地域限定社員などでない場合は、転勤は覚悟しなければなりません・・・。

3.業務の内容

業務の内容は、具体的な作業内容が書かれている訳ではなく、「○○業務全般」等、広く書かれています。

これは、従事内容を細かく列挙してしまうと、載っていない仕事をさせることができなくなってしまうからです。

4.勤務時間

始業、終業の時刻

始業、終業の時刻が書いてあります。

通常勤務以外に、変則労働(交代勤務)フレックスタイム制度について書かれていますのでご確認ください。

また、顧客常駐の場合や、建設作業などの作業場所に直行・直帰する場合、みなし労働時間として書かれています。

管理職などで、裁量労働制の場合は「10時~14時を基本とし、労働者の決定に委ねる」などと書かれています。

休憩時間

休憩時間は、「60分」などとシンプルに書かれています。
実際の休憩時間が、12時~13時など決まっている場合でも、60分と書いてあるでしょう。

法律上、休憩時間の最低基準の規定があり、基準以下はさすがに無いと思われますが、念のため。

「労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」(労働基準法第34条)

時間外労働

時間外労働の有無についてですが、多くの場合、「有」と書かれています。

なお、時間外手当(残業手当)、深夜手当、休日手当の詳しい内容は、以下関連記事を参照してください。

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5.休日、休暇

休暇

休日

毎週何曜日が休日かが書かれています。
サービス業や接客をする仕事では、「毎週水曜」など、土日以外の店休日が休みになる場合や、店休日がない場合などは、シフト制や交代で休みを取ることになるので、「月当たり8日」などと記載されています。

ここで、よく耳にする勘違いは、「週休2日」は、1週間に必ず2日休みがあるわけではないということです。
週休2日は、月に1回以上2日の休みがある週があればよく、その他の週は、週1日の休みでもいいのです。

では、毎週2日の休みがある場合を何というかというと、「完全週休2日」です。

このように、求人票に見られる用語を正しく理解してないと、入社してから「思っていたのと違う」と後悔してしまいます。

就活、転職活動中に知っていてもらいたい用語については、関連記事を参考にしてください。

休暇

有給休暇は、「6か月継続勤務した場合、10日」などと書かれています。

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(下に続く)

6.賃金、諸手当

賃金

基本賃金が、月給なのか日給なのか時間給なのか書かれていて、固定給以外の歩合・出来高制の場合「売上金の○○パーセント」など支給基準が記載されています。

特に、入社後に後悔しやすいことで、一定時間の残業代が給与の中に「みなし残業代(固定残業代)」として含まれている場合があります。

例えば、「基本給には、月40時間分の残業手当を含む」などと書かれており、40時間未満の残業の場合は一切の残業手当が出ないため、給与明細を見てガッカリしないようにしましょう。

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諸手当

家族手当や住宅手当、資格手当などが書かれています。

家族手当は、子供が何歳までもらえるか(高校卒業までか大学卒業までか?)、また、配偶者が一定以上収入あると打ち切られる場合もありますので確認してください。

また、基本給以外に、あまりにも各種手当が多すぎると、残業手当や賞与などが低くなる問題があります。

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所定時間外手当

残業手当や休日出勤手当などの割増賃金が書かれています。

注意点は、残業したから無条件で割増賃金がもらえるわけではなく、労働時間が、1日8時間(1週間40時間)を超えた場合に支払われますので、例えば、「定時勤務が7時間で、1時間残業」しても、25%の割増賃金ではなく、通常の1時間分の給与が支給されます。

【割増賃金一覧表】
割増賃金一覧

なお、1か月60時間を超える場合に支給される50%の割増率は、中小企業の場合、2023年3月までは特例で25%です。

賞与

賞与の有無と支給時期、および金額が書かれていますが、金額は明記されずに、「業績等を勘案して」などと書かれている場合が多いです。

退職金

退職金の有無と支給時期、および金額が書かれていますが、金額は明記されていないかもしれません。

なお、最近では退職金制度を廃止して、代わりに確定拠出型年金制度を導入する企業が増えてます。詳しくは以下関連記事で解説しています。

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7.退職に関する事項

定年退職

定年が年齢で決まっている場合は、「定年60歳」などと書かれています。

また、定年後の再雇用がある場合も「定年後65歳まで」などと書かれています。

自己事由退職

自己都合の退職の場合、「退職する1か月前までに届け出ること」などと書かれています。

解雇事由退職

主な解雇事由について、

  • 天災その他やむを得ない場合
  • 事業縮小等当社の都合
  • 職務命令に対する重大な違反行為

などと列挙され、詳細は、「就業規則第○○条~第○○条」などと書かれています。

8.その他

社会保険

社会保険の有無について書かれています。

社会保険とは、健康保険、介護、年金、雇用、労災の5つの保険のことで、入社するとこれらに加入できるかが記載されています。

通常、法人組織の会社にフルタイムで入社する場合は、上記5つの社会保険に加入しなければなりませんが、個人事業主やパートタイムなどでは加入されないこともあるので注意しましょう。

また、厚生年金の場合、会社により「厚生年金基金」に加入していることがあるので、併せて確認しておきましょう。

なお、公務員、農業、漁業など、内容が異なる場合があります。

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(下に続く)

まとめ

いかがでしたでしょうか。

労働条件通知書の重要性をお分かりいただけたと思います。

実際に、求人票の記載や面接官から聞いた内容と、契約時に提示された条件が異なるという話を聞くことがあります。

この場合、労働条件通知書(雇用契約書)の内容が正しいものとされますので、待遇面で疑問に思ったことは、たとえ小さな事でも内定先に確認をすることが重要です。

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